残酷なまでの優しさ ページ3
「……今日はコニーが出荷する日よ。あなた達の役目はただ一つ、みんなを外に出さないこと。良いわね?」
「分かったよ、ママ」
今日はまた家族が出荷される日。
確かに悲しいかと聞かれればそれは悲しい。でも、ノーマン以外の情は切り捨てるって決めたから。
「………なんつー顔してんだよ」
ママが出ていったあと、レイが私の肩を叩き、言った。
「…はぁ?なんつー顔って…別に普通でしょ。私自分の顔、上の中くらいには思ってるんだけど?」
はっ、と鼻で笑うと、ますますレイは顔を顰めた。
「……お前、めっちゃ泣きそうな顔してんぞ。お前こそママにバレるようなことすんなよな」
「………っ!」
パシンとレイの手を払い除けて、急いで部屋を出た。
**
私が顔に出した?
……いや、1番大事なのはそこじゃない。
ノーマン以外の人に、情が移ったと言うの?
ありえない。
確かに居なくなって寂しい、申し訳ないとは思うけれど、私のそれは友達が遠くへ行ってしまう程度のものだ。
ダメ、ダメ。
私はノーマン以外はいらないって決めたでしょ…?
早歩きで長い廊下をかける。
心臓が、どくどく音を立ててうるさい。
息が、苦しい……
「っ、わ」
「おっと」
前を見てなかった私の不注意で、誰かにぶつかってしまった。
発せられた声は、私を癒す人のものだった。
「……どうしたの、A。具合悪いの?顔色が悪い」
そう言って彼は私の頬を優しく撫でる。
「………ノーマン」
「ん?」
私が頼りなく彼の名前を呟くと、何かあったのかと察して優しく問いかけてくれた。
「………もうちょっと、一緒に居てくれないかなぁ……っ」
瞬間、ぎゅっと抱きしめられ、頭を撫でる感覚がした。
「…良いよ。何があったのかわかんないけど、心配だなあ。Aは優しいけど、いつも1人で抱え込むから」
何かあったら、僕達が居るからね。
と告げて、彼は笑った。
私の目頭が熱くなり、鼻がつんとする感覚に襲われる。
ノーマンの前で、泣いて、しまう。
「…ふふ、僕は何にも見えないよ。」
察しが良い彼が、私が鼻をすする音で気づいた。
本当に、彼にはかなわない。
優しくて、甘くて、それに甘えてしまう自分が憎い。
………強く、ならなきゃ。
ノーマンを守れるまでの力が欲しい。
やっぱり私は彼が居るから自分を保てるんだ、と改めて再確認した。
彼が輝ける場所を、私が持てる最大限の力で守り通そう。
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めみ(プロフ) - 夜分遅くに申し訳ないです、この作品や私の【愛】は止まらないっ!どちらも読みました、!ノーマン推しの私にはぶっ刺さりました、、!!更新待ってます! (2021年3月16日 3時) (レス) id: 08a814fa9c (このIDを非表示/違反報告)
嘘の仮面 - 泣いた。そして泣いた←泣きすぎじゃ そして最後に共通点の無い黒子の作品をみて笑った。私の表情筋はどうなっとるんだ( ・∇・) (2020年11月21日 22時) (レス) id: f9b0be6a5b (このIDを非表示/違反報告)
くらげっち - 夢主ちゃん…1人で抱え込みすぎですヨォォ!!!報われて欲しいです。゚(゚´Д`゚)゚。更新頑張ってください。 (2020年6月10日 15時) (レス) id: 7493ad2d55 (このIDを非表示/違反報告)
奈津子(プロフ) - 面白いです。そして本当に夢主ちゃん、頑張りすぎてる、報われて欲しい。 (2020年4月25日 13時) (レス) id: 55bc886d22 (このIDを非表示/違反報告)
塩きゃらめる(プロフ) - すっごい面白いです!!続きが気になる…更新待ってます! (2020年3月21日 16時) (レス) id: 936d9f0a3b (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:相沢恋 x他1人 | 作者ホームページ:http://urana
作成日時:2019年2月28日 21時