2話 そんなウチのチームが愛しい ページ2
そして、試合が始まらないまま過ぎていく時間。
もう何十分待ったか分からないが、向こうのチームの誰かが帰ってこないらしい。
いないなら別の誰か連れてくれば良いじゃんとか思ったけど良く考えたら人数ギリギリで控えはいないんだっけ？
それよりもまず試合直前にいなくなるってどうなんだろう…。
何？敵前逃亡なの？
｢体冷えない？大丈夫？｣
｢ん？あぁまだ大丈夫だろ｣
｢まぁあと10分来なかったら走り込みでもした方が良いか？｣
こちらコートに固まって話しているメンバーに声をかけてみると、佐久間と源田がお互い顔を合わせて答える。
｢あんなヤツらとの試合ぐらい体が冷えてたって平気に決まってるだろ｣
｢デコには聞いてません｣
｢あ!?｣
へっと見下した笑みを浮かべた辺見に、ちょっとばかしイラッときてピシャリと言ってのける。
というか体を温めるのは怪我しない為に必要な事なんだけど、レギュラー取ってる人間の発した言葉だとは思えないよなぁ。
半目でため息をついてみせると何だよ！と不機嫌な声が返ってくる。
｢ほらほら喧嘩しない。なんでお前らはそうすぐ喧嘩すんだよ｣
｢止めんな、佐久間。今日と言う今日は許さねぇかんな｣
呆れ顔で間に入った佐久間に噛み付いた辺見が再び私の方を向いた頃には、私は佐久間の後ろに移動してベッと舌を出した。
｢あんまりしつこいと辺見の分の差し入れは持ってこないから｣
｢…｣
｢辺見は桜花の差し入れのプリンが好きだからな｣
｢き、鬼道さん！｣
この一言で大人しくなるんだから本当に面白い。
以前彼の好物だというプリンを差し入れに持ってきた時に酷く気に入ったらしく、私の贔屓にしてるお店まで買いに行っているらしい。
そのプリンをたまに差し入れに持ってくるとものすごく嬉しそうな顔をするのだ。
家でも食べてるだろうになんでだろうと聞いてみたら、｢みんなと一緒に食べるとさらに美味しいから｣とか可愛い事言われたのも記憶に新しい。
｢はは、照れる事じゃないだろ。俺もあのプリン好きだぞ｣
｢俺もー｣
源田と佐久間が楽しそうに口を出すと、耳まで赤くなった辺見がプイとそっぽを向く。
そんな辺見が成神くんと洞面くんに慰められているのを見ると、この1年2人は本当に優秀だな、と思う。
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作者名：ちょこ大福 | 作成日時：2016年9月9日 1時
