夢の咲学院"普通科"生徒会長［男主］ (ページ4)

今日:3 hit、昨日:3 hit、合計:35,146 hit

もやもやページ4

薫くんだけは信じれないようなものを見るような目で照れくさそうにはにかんだ澪くんを見ていた。

「......五条さん？」

「......羽風さん」

「なんじゃ、2人は知り合いかえ？」

「うん。まあ。そんなとこ。
五条さん、羽風と呼ばれるのはあまり好きではありませんので、よろしければ薫とお呼びください」

「......俺も五条は好きじゃないから澪でよろしく。あと、堅苦しいのも好きじゃない。俺は今、五条としてじゃなくて、澪としてここにいるから」

「じゃあ、澪くんで。いつもの幼馴染2人は来てないの？」

「うん。俺だけ」

「そっか。ってごめんごめん。朔間さんたちに全く関係ない話をしちゃったねー。はい！これでこんな堅い話は終わりってことで。澪くんもそれでいい？」

「......うん。ありがとね、薫」

「げろげろ。俺は男に感謝されて喜ぶような人じゃないから～」

澪くんは薫くんに五条さんと呼ばれた時、敬語を使われた時、ほんの一瞬だが悲しそうな顔をした。薫くんもそれに気づいて直ぐに話を変えたのだろう。薫くんだけが知っている澪くんのこと。澪くんの事情。今の我輩にそれを知る権利はなくて。何故かとても悲しくて、もやもやした。

「意味わかんねー話ばっかしてんじゃねぇよ。ミーティングすんだろ。ほら澪、俺様の隣座れよ」

わんこはこう見えて他人の気持ちにとても気を利かせられる子だ。我輩に目で、大丈夫かよ、
と伝えてくる。わんこの心配に感謝しつつ、大丈夫じゃよ、と小声で言った。
わんこに対して言っているはずなのに、何故か自分に暗示をかけているような気分になった。

♢

相変わらずもやもやした気持ちはそのままだが、ミーティングはそれに反比例するように順調に進んだ。
時間はすぐに過ぎ、もう夕日が登って軽音部室のギターケースを赤く照らしている。

「そろそろお開きにするかの」

「澪、明日も練習に参加してくれないだろうか」

「うん、澪くんがいるとステージとかダンスの振り付けとか考えやすいしね」

澪くんは想像していた以上に頭が良く、ミーティングの際もとても役立っていた。
ステージの外観を考えるときに、耐久や作成にかかる時間、お金など、専門家並みの知識を持っていて、とても驚かされたのだ。

「俺は来たいけど、ねえ、零。明日も来てもいい？」

澪くんが上目遣いで少し心配そうに聞いてくる。

「......もちろんじゃよ」

カラカラの喉で答える。
さっきまでのもやもやはいつのまにか無くなっていた。