探偵社の窓から突っ込んだら色々狙われてます

第九十三話 ページ44

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少し前の事。判り易く云うならば、ドストエフスキーの居場所を突き止め太宰が声をかけた辺りだ


「鼠、俺の部下のウイルスを解除して貰おうか」


フィッツジェラルドが怒りを孕ませ余裕げな笑みを消して云った。金を払う以上、自らの所有物に手を出される事を彼は嫌ったのだ

彼ーーードストエフスキーは嗤う


「嗚呼 あの哀れな(・・・)子ですか
心配せずともあの子は死にませんよ」


今、思い出したかのように云うドストエフスキーに苛立ちが増す。グシャリと新聞紙に深い皺が刻まれた
太宰は何かを見定めるようにして静観している。


「それくらい判っている。
だが、俺のものを《鼠》に害される事が気にくわん」

「……もの、ですか」


知る彼は嗤う。そして口を開くのだ
時に悪魔、時に主と呼ばれる根源たる言葉を吐く


ーー人は異常な行動をしたとして、"悪人"や"気狂い"と呼ばれるのが精一杯。そこに優秀かつ利己的で、受け取り方によっては神にも悪魔にもなる言葉を持つ者が真に恐れられると私は思うーー


「所有物ならばしっかりと把握しておくべきです

彼女は利他的で聡明で用心深く、そして"人"と呼ぶのも怪しい者になる(・・)」


ニィ、と美しくも泥の様にへばりつく笑み

だ、と断言せずに直ぐ側の未来を予言ーー否、断言している。太宰は違和感に直ぐ様気付き、フィッツジェラルドも一泊遅れて気がつく


「彼女の異能生命体である『天使と悪魔』

あれが(・・・)、本当にただの(・・・・・・)異能生命体(・・・・・)に見えますか?(・・・・・・・)」


太宰が何かに気付く。
攻め立てるように問い詰めようとした時、坂口 安吾率いるガスマスクを付け少しも肌が見えない黒い重装備の人間達ーーー特務課が彼を囲み、言葉は誰にも知られず押し殺された

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