探偵社の窓から突っ込んだら色々狙われてます

第八十四話 ページ35

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あの人が一つの策に賭けるなんて有り得ない。国木田さんだって云っていた。
『正常が異常で、異常が正常な男』だって

メールにはたった一言、『力を貸して』とあるだけ
これの宛先は私であって、私じゃない。

私の所属する組織を見抜いた上で、書いたんだ


「ボス、『神の目』です
あの人は、あの機械の力を借りてっ……！！」

「騒ぐな、頭に響くだろう
それにその男に力を貸して何になる」


ガンガンと金槌で殴られ続けていると錯覚する程に脳が叫びをあげ、着実に蝕まれる精神力
後一夜耐えれば、きっと。そんな薄い望みに縋り付いて、奮い立たせているのに近かった


「彼らは騒ぎに紛れてボスの会社の金を四割くすねた
太宰さんが貴方相手に無償で手伝え、なんて絶対に云わない

詰まり、その四割が返ってくるってことだと！」


知っていたんだ。予測していたんだ。
太宰さんは私の携帯に空メールを残して敢えて入っていた向きと逆にして戻した
それを見つけた時、例え近くにボスが居らずとも電話するなり何なりで伝えるだろう。そして説得する

確信にも近い程にあの人は予測していた


「……ふむ
消えた金に興味は無いが……善いだろう、鼠に取られているのは気に食わん

然しおまえはそれよりも、とっとと休め」


その言葉を放つと同時に軽く放られ、危うく頭をぶつけそうになり乍らもいつの間にか到着して扉を開けたタクシーに飛び乗った

ボスもそのまま乗り込み、腰の低い運転手に上から目線で行き先を告げた
……せめて放り投げてくれなかったら善かったのに

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