第六十八話 ページ19
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「ご無事を信じていました」
海が目の前にあるベンチに座るフィッツジェラルドにその側を立つオルコットさん
私は飽くまでも付き添いに近い為、二つ離れたベンチに腰掛けている
話?聞く気ないね。私は金が入ればそれで善い
「戻って下さい。組合にはボスが必要です
……私にも」
「戻れ?この薄汚れた男に云っているのか?」
「そうです」
「違うな。君は「記憶の中の男」に云っている
ここにいるのは死人だ
全財産と地位を失い、妻を救う方策も潰えた人間の燃えかすだ
『注ぎ込んだ額に比例して身体強化する』能力も今やただの
この国では死人は燃やすのだ、オルコット君
ボスが必要なら他をあたれ」
真っ向からの自らを否定する言葉
オルコットさんを不必要だと否定するよりも彼女にとって心に来るのではないのだろうか
この様子じゃ……ねぇ
グラリとベンチの背凭れにもたれて真後ろを頸を逆さまで見遣る。木の上の人影すら気付かないほどに、彼は莫迦になったのだろうか
「フィッツジェラルド様の価値は、お金でも地位でもありません。人の上に立つ資質です
貴方の命令で作戦を立てる時、私は強い巨人になれるんです
大嫌いな自分じゃなく
命令を下さい。あなたの強い言葉で」
「やめろ」
願いを叶えるではなく、願いを聞く
変に言葉が巧みだ。と云うかあの人は死ぬまでここを彷徨う気なのだろうか
妻を救う手立てがないからと云って
指輪で救われた恩があるのに
「命令が欲しいと云ったな。なら命じよう
二度と俺の前に現れるな」
惨めにさせるな?笑えない冗句を云ってくれる
別に怒りはしないしムカつかないけれど
「奥さんへの借りも返さず、この路地で死ぬまで彷徨うんですか。
ならかなりの覚悟がおありの様で」
「……」
「貴方の国の貧民街がどの様なものかは存じませんが、かなりの苦痛ですよ?
この国では死ぬ時に燃やすと云いましたが、それは飽くまで表。裏でわざわざ燃やしてくれるとでも?
精々身包み剥がされて持ち物も全て奪われ、そこらに捨てられ、野犬の餌が関の山
強かろうが何だろうが温室育ちに変わりはないのだから」
「……忠告、有難う」
まるで亡霊の様に、彼は小さくなった背中で行ってしまった
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まるげりーた - え、終わり⁈名残惜しすぎます〜! (8月20日 19時) (レス) @page48 id: cea80c1fef (このIDを非表示/違反報告)
桜の下(プロフ) - とても面白いです!更新頑張ってください! (2020年5月8日 13時) (レス) id: 6dcf85fe6b (このIDを非表示/違反報告)
ふふふ。 - 面白いです!!最高です!!応援してます!! (2018年4月23日 20時) (レス) id: 02b15496d1 (このIDを非表示/違反報告)
しぇるふぃあ。 - 六十五話、「ただ浮かんでいる」の後の「胎内」は「体内」ではありませんか?更新早くてすごく嬉しいです!長文失礼しました。 (2018年4月15日 20時) (レス) id: 2fca820d76 (このIDを非表示/違反報告)
冬霞 六花(プロフ) - 第六十八話の、「ギルドには、ボスが必要です」の処が「ギルドには、バスが必要です」に成ってますよ、長文失礼しました。 (2018年4月15日 17時) (レス) id: b8417422b5 (このIDを非表示/違反報告)
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