第六話 ページ7
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「佳し……取り敢えずは撒いたかな」
少し分厚く片目しかない
探偵社の建物から数キロ離れた路地裏で少女は一人息を吐いた。安堵の息である
光の指す表の世界から背を向けて暗闇へと歩を進める。まるで散歩でもするかの様に気軽に歩いていく少女の身なりはとても薄暗い路地には似合わない
「……あっれ。おかしいなぁ」
「何が?」
「ちゃんと撒いたし、盗聴器も潰した筈なんだけどなぁ
ーーー如何して判ったんですか」
屑となった盗聴器をパラパラと捨てて振り返るA
そこにはとても善い笑顔を浮かべる太宰の姿があった。薄暗い路地に仄かな血の匂いを導いた男にAは露骨に嫌悪する
いや、確かに嬉しい。嬉しいよ?
憧れとも云えるしイケメンランキング3位(一位は中原さん)に輝いたあの太宰 治が目の前にいるのだから、歓喜がないはずがない
けれどね?それは私が後ろめたい事も何もなかった時ならば、それを前面に出したんだ
あの悪癖だって二つ返事で返す。けれど私はそれが出来ない身で、生まれそして育って来たのだ
所詮は、前世の世迷言となり散った願いだ
「私にとって路地裏は庭とも云える。
あの経路から考えるに、此処らしかないと思ってね」
あの経路。
太宰は探偵社周りの路地裏の道すら勿論の如く把握している。どの道が何処に繋がっているか、など考えずとも躰が動く
とどのつまり、彼女が降りたであろう探偵社周りの路地裏の中から"最適解"かつ完璧な経路を導き出し、此処だと見当をつけたのだ
「……はぁ。本当に敵わない」
「降参してくれるなら、是非探偵社に」
「行きません。ーーーー行くわけには、行きません」
彼女が少しダボついた服の腕の裾をたくし上げる
現れたのは腕時計。彼女は手の甲を太宰へと向けて手を握り締める
ーーヒュンッ!!
「っ!」
腕時計の繋ぎ目の部分が展開し、中から三角形状の針が先端についた
伸びたままの電線はそのまま何処かへ突っ走って行くものだと思ったが、そんなわけがなく。
また風を切って、電線が巻き戻される
まるでそこだけ時を戻したように電線は寸分違わず腕時計の中へと戻り、カチリと音を立てて閉めれば普通の腕時計に元通り
「……やってくれるね」
「追いかけてくる貴方が悪い」
一閃。太宰の頰に傷が入り、ツーと血が垂れていた
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柚羽(プロフ) - 和寂さんの書き方に惚れました!更新、応援してます! (2018年4月9日 22時) (レス) id: cf2592aa4a (このIDを非表示/違反報告)
庵脊(プロフ) - 夢主チャンに惚れました!!更新頑張ってください!勝手ながらも応援させていただきます!!! (2018年4月7日 5時) (レス) id: 4f85448558 (このIDを非表示/違反報告)
博多の塩 - 夢主ちゃんかっこ可愛い!色んな組織に狙われる...なんて美味しい展開←更新遅くても良いので頑張って下さい。 (2018年4月7日 0時) (レス) id: e9e8ce5522 (このIDを非表示/違反報告)
雪音(プロフ) - 主人公ちゃんかっこいいです♪素敵な作品ありがとうございます。 (2018年4月6日 21時) (レス) id: e557b2d593 (このIDを非表示/違反報告)
ほほふー - なんですか、この神作品(白目) (2018年4月6日 16時) (レス) id: b3e457f7f6 (このIDを非表示/違反報告)
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