第四十一話 ページ42
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昔々、父に愛されず、母に愛された子がおりました
「はぁ……やってしまったなぁ……」
しゃがみ込んだ体制から頬杖をついて溜息を吐く
とうにあの路地からは離れ、屋上の手摺の上に躰を乗せていた
少し強い風が血を吸い傷んだ髪を揺らす。手入れしたいとは思わないけれど、こうも傷んでいると鬱陶しさすら感じる
つい先刻、ポートマフィアの首領に怒りをぶつけ、逃げ去った。恥も後悔も無いけれどやってしまったと云う思いはある。決して後悔ではない
「ーーー見つけたゼ、女!」
「え」
下らない思考に捉われ過ぎた。降って湧いた声に何時もならば落ち着いている筈が、取り乱して手摺の上から足を踏み外し軸がブレる。それも外側に
咄嗟に対処しようとする前に、誰かが服の襟を掴み取った。絞まる頸と同時に陽気な声音。
「いやぁ、危なかったね!このトウェイン様が来なければ真っ逆さま!
あっという間に死んでたよ!」
「……誰の所為だと」
「トムかな!」
「そりゃないゼ!!」
ニッコニコ笑う自信家さん。最早私には異能者であるか、自伝を書いているかという二項目しか探偵社の乱歩さんとの違いがお生憎様、判らない。
嗚呼 でも乱歩さんの方が後先を考えているか
「……あの、何か用ですかね。
後早く離して欲しいです。別に平気なんで」
「そう云うわけにもいかないよ!落としちゃ死んじゃうし流石に怒られる
何より、惚れたレディを手放すわけないよね!」
「……あっそーですか」
ダラリと力を抜いた。少し焦ったような声音を発しているが知らんぷり
又もやお生憎様だが、サラリとそう云う事を云われて動揺する程女の子しちゃいない。可愛らしい反応を求めてるなら他を当たれ
ゆっくりと引き上げ、屋上に足を付けた私は軽く頸や肩を回して骨を鳴らした
「動揺しないんだね」
「してどうしろと?そういうのを求めてるなら他をどうぞ」
「真逆!素直な子も好きだけど、そんな君が好きなんだもの!」
「外国の方は直球ですねぇ」
「この国の人が奥手なだけだろ?」
まぁ、否定はしない。だからと云って素直になれないだけだ、とか思われてグイグイ来られるのも厭だけれどね。ニコニコと愛を吐く彼に、微かに戸惑った
彼の存在というか、その思考回路は全くの予想外だったからだ
その子どもは、愛を知っていました。
勿論伝え方も。
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柚羽(プロフ) - 和寂さんの書き方に惚れました!更新、応援してます! (2018年4月9日 22時) (レス) id: cf2592aa4a (このIDを非表示/違反報告)
庵脊(プロフ) - 夢主チャンに惚れました!!更新頑張ってください!勝手ながらも応援させていただきます!!! (2018年4月7日 5時) (レス) id: 4f85448558 (このIDを非表示/違反報告)
博多の塩 - 夢主ちゃんかっこ可愛い!色んな組織に狙われる...なんて美味しい展開←更新遅くても良いので頑張って下さい。 (2018年4月7日 0時) (レス) id: e9e8ce5522 (このIDを非表示/違反報告)
雪音(プロフ) - 主人公ちゃんかっこいいです♪素敵な作品ありがとうございます。 (2018年4月6日 21時) (レス) id: e557b2d593 (このIDを非表示/違反報告)
ほほふー - なんですか、この神作品(白目) (2018年4月6日 16時) (レス) id: b3e457f7f6 (このIDを非表示/違反報告)
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