第二十一話 ページ22
，
無理矢理にでも逃げるべきだった。
闇は彼らの庭。どんな闇の中にも躰を丸めて此方をジッと見据えるのだ
現在地の暗がりの倉庫は灯どころか月の光すらなく、グッと手に汗を握る。視界を遮る大量の木箱。身を隠すには絶好の場所
本格的に、太宰さんは兎も角探偵社が狙われれば面倒に変わりはない
悠々と本を読む太宰さんに膝を抱えて不安げな敦
何処にそんな本が売っていて、誰がそんな本を書いているのか判らない物騒な本を到底読めないだろうに、暗がりの中で広げ、足を組んで読んでいる
孤児院の言葉を思い出しネガティヴから抜け出せない敦の独白。厭、御免ね？正直、ほんっっとうに雑音としか思えないんだよね
まぁ後々に判るであろう組織に、敦よりも煩い輩は沢山居たし未だマシだ
「却説ーーーそろそろかな」
見上げた先は丸い月。雲が晴れぼんやりと、けれどしっかりと光っている
ガタン！
静寂の呑み込む空間を裂く物音。何かが墜落でもしたかと当たって冷静に思考する
怯え、警戒するのは敦のみ
「今……そこで物音が！」
「そうだね」
「きっと奴ですよ、太宰さん！」
「風で何か落ちたんだろう」
「ひ、人食い虎だ
僕を喰いに来たんだ」
立ち上がり、物音の先の闇を警戒する敦
恐怖を何かにぶつけたいのか、焦ったような、少しの苛立ちさえも感じさせる。
けれど太宰は狼狽えず、パタンと音を立てて本を閉じた
「そもそも変なんだよ、敦君」
敦が月の光を浴びて、何かに呼ばれるように月を凝視する
ピクリとも、動かなくなった
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 1256人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を含むプレイリスト 
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
柚羽(プロフ) - 和寂さんの書き方に惚れました！更新、応援してます！ (2018年4月9日 22時) (
レス) id: cf2592aa4a (このIDを非表示/違反報告)
庵脊(プロフ) - 夢主チャンに惚れました!!更新頑張ってください！勝手ながらも応援させていただきます!!! (2018年4月7日 5時) (レス) id: 4f85448558 (このIDを非表示/違反報告)
博多の塩 - 夢主ちゃんかっこ可愛い！色んな組織に狙われる...なんて美味しい展開←更新遅くても良いので頑張って下さい。 (2018年4月7日 0時) (レス) id: e9e8ce5522 (このIDを非表示/違反報告)
雪音(プロフ) - 主人公ちゃんかっこいいです♪素敵な作品ありがとうございます。 (2018年4月6日 21時) (レス) id: e557b2d593 (このIDを非表示/違反報告)
ほほふー - なんですか、この神作品(白目) (2018年4月6日 16時) (レス) id: b3e457f7f6 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
