脅威さんといっしょ！(不本意)【zm】

ゾムさんは真っ直ぐ ページ6

「ひ、一目惚れ……？」
「せや」


この状況をおかしいと言ってくれる方を急募したい。頼む。おかしいだろう。だって、女の子の部屋のリビングで向かい会うストーカーと家主って。


ゾムさん、と名乗る彼はそりゃもう声高々に「めっちゃ好きやわ」と楽しそうにしている。いや、勝手にテンション上がってもらっても困るんですけど。



「どうして家の場所知ってるんですか。
あなたいつも、家までの道でうまいこと撒いてたのに……」
「あー、最近遠回りして帰っとったなぁ。でも心配せんでも、好きになった次の日に家と職場把握したから」


鳥肌。
怖いな！！本当にこの人怖いな！！なんで私向き合ってんの！？早く警察呼ばないといけないだろ！！でも不味いよな、この人。


そもそも物音も出さずに寝室に入ってきた奇跡があるし、それを考えると尚更この人を今警察に突き出すのは不利極まりない。


「大体、家にはどうやって入ったんですか」
「合鍵作った」
「……」
「何引いてんの」
「引くに決まってんでしょう、どれだけ罪を重ねれば気が済むんですか」


至極当然と言ったように「え？好きな人には真摯に向き合うのが筋やろ」と言う。えぇ、何そのひん曲がってる筋の通し方。絶対それ筋通してない。


「それに俺に罪なんてないで」
「いやいや、不法侵入とストーカー行為と勝手に合鍵作るとか……」


そう言うとまた不気味に微笑んでゾムさんは机の上の私の手に掌を重ねる。少し大きな手はやけに冷たい。心が温かい証拠なんて言った馬鹿は、今すぐそのロジック練り直せ。

少し低い声が耳を擽る。
少し真面目さを思わせるトーンがやけに刺さる。



「……別にもうコソコソせぇへん、
警察に言いたきゃ言えばええやろ」

「……」


急に、なんですか。

なんで諦めモードはいってんのこの人。
なんで拗ねてんの。
なんでやさぐれてんの。

ゾムさんは先手必勝→←ゾムさんは危ない

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