グルッペンさんの口車 ページ39
床に崩れるように座っていた私の背後で声がした。
振り向くと夕暮れ時の夕日に照らされながら、勝手に鍵を開けて入って来ていたその人が、片手に袋をもって突っ立っていた。
「ぞ、むさん……?」
「えっ……ちょっ!?A、泣いてんの!?
なんでや!
会社でハブられたんか?辛いことあったのか?誰や、誰にやられ___
私は気がつくとゾムさんにしがみつくように抱きついていた。泣いて赤く腫れかけた目元なんて気にせず、ゾムさんに思い切り抱きついた。
なんで、私は……。
心は安堵していた。
理由は結局分からないけれど、変わらぬ姿と変わらぬ態度で、いつものように勝手に買い物をして不法侵入……もとい帰ってくるこの人に。
「A……?!ど、どうしたん?俺としてはこんなに甘えられると、今日命日なんかなって錯覚してしまうんやけど」
「……私が嫌いになったから、来なくなったんじゃ、ないんですか」
涙ぐんでそう聞くとゾムさんは素っ頓狂な「はぁ……?」という声を零しながら、言葉を続ける。
「なんのこと?
俺がAのこと嫌いになる訳ないやろ。
ストーカー嘗めてんのか」
「……でも、ここ最近帰り道も家にもいないから」
「グルッペンがAから『この一週間は本気で脚本書くから関わらないで』って聞いたって言ってたから」
「は?そんなこと言ってないですよ!?」
衝撃の事実が明るみになると共に私はすぐさまグルッペンさんに電話をかけた。あの人、何デタラメ言ってんの。……本人には直接言えないけど、バカじゃないの。脚本ならとっくにこの前間に合わせたっつの!!私は締切厳守が売りなんだから。
『はい、グルッペンです……久しぶり、染村さん』
まるで何を言われるか分かってる、みたいな声で。
「なんでゾムさんにデタラメ言ったんですか」
そう言うと電話越しにグルッペンさんが大笑いをする。
『ゾムも律儀やなぁ。ほんまに一週間守るなんて。……俺の霊感だと、どうせ寂しくて泣いてた気がするんやけど、そこら辺どう?』
何だこの人、全部お見通しかよ。
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暁郗 - 待ってぇ…、めっちゃ絵上手くないですか…?夢主ちゃん可愛過ぎるやろ。髪少しボサってしてるのとか前髪長いのとかほんと好きです。これからもめっちゃ応援します。 (2020年10月4日 10時) (レス) id: 14cb33816d (このIDを非表示/違反報告)
木材(もくざい)(プロフ) - ごめんなさい!!!!好きすぎて泣きました笑これからも我々だ作品期待してます頑張ってください! (2018年12月1日 14時) (レス) id: cfd7089d94 (このIDを非表示/違反報告)
狸豆 - めっちゃ絵上手いじゃないすかぁー()羨ましいですわうふふ() (2018年11月2日 23時) (レス) id: ffc9be237d (このIDを非表示/違反報告)
鮭 - かきのたね様の作品、楽しく拝見させて頂いております。続編も楽しみです^-^ (2018年11月1日 21時) (レス) id: 93041e31ed (このIDを非表示/違反報告)
鹿野ユズナ(プロフ) - 夢主ちゃんが外を歩いてて、すれ違う人達が自分を見ては慌てて目を逸らして足早に去っていくから可笑しいと思って後ろ見て見たら実はzmさんが着いてきてた、みたいなのとか…ハロウィンzmさんとか…お願い出来ませんか…出来ればでいいので…! (2018年11月1日 18時) (レス) id: f48090b258 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:かきのたね | 作成日時:2018年10月21日 9時