グルッペンさんは低い声 ページ32
グルッペンさんが告げる言葉にもはや何も言い返せなくなってしまう。
「(ゾムさんが嫌いか好きか……そんなの、私が一番知りたいのに)」
抱えている感情の名前なんて知らない。
足元をすくって、勝手に入り込んできた不法侵入のそれは私に沢山の物を与えた。
あれは、なに。
私は、なにをもらってしまったんだろうか。
グルッペンさんが言う言葉の答えも、感情も結局見つからない。困ったなぁ、なんて他人事みたく思えてしまう。
「さっき、あいつに聞いた」
「……何をですか」
グルッペンさんが不意に立ち上がって、口を開く。
「俺も、染村さんのこと狙ってもいいか、って」
「はい……?」
え?
クスクスと笑うグルッペンさんがソファに腰掛けた私の顎を掴む。引き寄せるように自分の顔の近くにもっていくグルッペンさんがそこにいた。
コネシマの知り合いは揃いも揃って蛮族ばっかりやんけ。野蛮すぎるんですけど。状況整理に頭が追いつかない中で、グルッペンさんは口を開く。
「甲斐甲斐しく人の世話して、色恋沙汰に素直じゃない女の子……ねぇ」
「い、いや……あの、近い……」
近いです、と言いかけたその時、グルッペンさんが耳元に近づいて「そういうの好きだぞ」と笑いながら言う。低い声がやたら響くせいか、ぞくぞくと身体が震えた。そんな様子を見てからかうように「耳弱いんやな」とまた笑う。
勘弁してくれ……頭がおかしくなりそうだ。こんな、男慣れしてない私に……これ以上何をしたいのだ。
ふふ、と綺麗なバリトンボイスが脳内を溶かそうとする中、その空気を壊したのは扉を思い切り開ける大きな音だった。はっ、と顔を上げると寝室の扉が全開になって、そこに息を荒くするゾムさんがいた。
「おい……」
こちらを殺してしまいそうなほどの、鋭い眼差しを前髪の隙間から覗かせて。
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暁郗 - 待ってぇ…、めっちゃ絵上手くないですか…?夢主ちゃん可愛過ぎるやろ。髪少しボサってしてるのとか前髪長いのとかほんと好きです。これからもめっちゃ応援します。 (2020年10月4日 10時) (レス) id: 14cb33816d (このIDを非表示/違反報告)
木材(もくざい)(プロフ) - ごめんなさい!!!!好きすぎて泣きました笑これからも我々だ作品期待してます頑張ってください! (2018年12月1日 14時) (レス) id: cfd7089d94 (このIDを非表示/違反報告)
狸豆 - めっちゃ絵上手いじゃないすかぁー()羨ましいですわうふふ() (2018年11月2日 23時) (レス) id: ffc9be237d (このIDを非表示/違反報告)
鮭 - かきのたね様の作品、楽しく拝見させて頂いております。続編も楽しみです^-^ (2018年11月1日 21時) (レス) id: 93041e31ed (このIDを非表示/違反報告)
鹿野ユズナ(プロフ) - 夢主ちゃんが外を歩いてて、すれ違う人達が自分を見ては慌てて目を逸らして足早に去っていくから可笑しいと思って後ろ見て見たら実はzmさんが着いてきてた、みたいなのとか…ハロウィンzmさんとか…お願い出来ませんか…出来ればでいいので…! (2018年11月1日 18時) (レス) id: f48090b258 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:かきのたね | 作成日時:2018年10月21日 9時