ゾムさんと別れ ページ2
見てみると前髪が長くて目元が見えない。
喋り方とは打って変わった、見た目……。物珍しくその人を見ていると、不意に口を開いた。
「自信持ってええと思いますよ。
自分の才能」
「えっ」
素っ頓狂な返事が零れた。
「あんた、脚本とか書いてる人やろ」
更に戸惑う頭なんて置いていくように、その人は私を知ったような口ぶりでその唯一見える口元は、微笑みを浮かべている。なんでそんなこと、知ってるんだろう。
私、今この人と話してる間に言ったか……?いや、それ以前に私の今の悩みを見透かすなんて何者?当たり前だけど、脚本原稿にはそんなこと書いてないのに。様々な考えに思考を巡らせてみるが、中々答えは浮かばない。
突然の発言に、なんだか容貌が怪しく思えてくる。前髪長いとか……なんか拗らせてんだろ、あんた……。
「さっき独り言、言ってたの聞こえたから」
「えっ!?嘘、声にでてたの…?!」
「そりゃもう明瞭に」
な、なんや、この人それ聞いてただけだったんだな。よかった、って心の中で少しでも疑ったり怪しい前髪とか思ったこと謝らないと。あくまで心の中で。
「……あの、ありがとうございます。
見ず知らずの人に慰めの言葉をくださるなんて」
「見ず知らずも何も……」
「……?」
「あー、いやいやなんでもないですよ」
その人は少し笑って、何か言いかけた様な言葉を誤魔化した。なんて優しい声色をしているのだろう。
でも、何故かどこか危なげ。
背反したその要素に多少の違和感を感じながら、その人と別れた。
違和感はこんな風にするりと足元を横切る。小さな蔦に小指を絡め取られたら最後、私は多分その場所から動くことは出来ないだろう。
だから、気づくべきだった。
この時、この一瞬で。
既に私の足元を捕らえた捕食者に。
「また、会えたら」
何気ない別れの一言は、決して終わりではない。それは始まりを知らせる静寂の最中の、たった一声に過ぎない。
この言葉にそれ相応の意味を含んでいたなんて、念頭にあるわけなかった。
「(2%、くらいやろか)」
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暁郗 - 待ってぇ…、めっちゃ絵上手くないですか…?夢主ちゃん可愛過ぎるやろ。髪少しボサってしてるのとか前髪長いのとかほんと好きです。これからもめっちゃ応援します。 (2020年10月4日 10時) (レス) id: 14cb33816d (このIDを非表示/違反報告)
木材(もくざい)(プロフ) - ごめんなさい!!!!好きすぎて泣きました笑これからも我々だ作品期待してます頑張ってください! (2018年12月1日 14時) (レス) id: cfd7089d94 (このIDを非表示/違反報告)
狸豆 - めっちゃ絵上手いじゃないすかぁー()羨ましいですわうふふ() (2018年11月2日 23時) (レス) id: ffc9be237d (このIDを非表示/違反報告)
鮭 - かきのたね様の作品、楽しく拝見させて頂いております。続編も楽しみです^-^ (2018年11月1日 21時) (レス) id: 93041e31ed (このIDを非表示/違反報告)
鹿野ユズナ(プロフ) - 夢主ちゃんが外を歩いてて、すれ違う人達が自分を見ては慌てて目を逸らして足早に去っていくから可笑しいと思って後ろ見て見たら実はzmさんが着いてきてた、みたいなのとか…ハロウィンzmさんとか…お願い出来ませんか…出来ればでいいので…! (2018年11月1日 18時) (レス) id: f48090b258 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:かきのたね | 作成日時:2018年10月21日 9時