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今日も変わらず受付カウンターで本を読む
？「あの…。」
不意に聞こえた声に顔をあげる
？「返却お願いします。」
こないだの不思議な人だ
「はい。」
本を受け取る
今日も顔がよく見えない
マスクに帽子を深く被っている
ずっとそのままカウンターの前に立っているので気になった
「あの…。まだ何か？」
宏「え？」
「返却の時は本を渡したらここに居なくても大丈夫ですよ？カードを使ったりもしないので。こちらで返却手続きをして棚に戻しますので。」
宏「あ…。」
一瞬だけ目が合う
その瞬間少しだけ時が止まった気がした
宏「月影さんでしょうか？」
突然呼ばれ我に返る
「はい。そうです。」
宏「祖母がいつもお世話になっています。」
「祖母…。もしかして常連のおばあちゃんの！」
宏「そうです。孫の荒木宏文です。」
「初めまして。いつもご利用ありがとうございます。」
宏「こちらこそ。いつも話し相手になってもらってるみたいで。祖母から月影さんの事は何度か聞いています。」
「そうなんですか？なんか恥ずかしいですね。」
宏「祖母の言っていた通りですね。」
そう言ってふわりと優しく微笑んだのがわかった
「言っていた通りですか？」
宏「真面目で優しい人だと良く言ってます。」
「そんなことないですよ。でも嬉しいです。荒木さんの笑った時の雰囲気は似ていますね。」
宏「雰囲気ですか？」
「はい。優しい感じと言いますか穏やかと言いますか。」
宏「ありがとうございます。なんか照れますね。」
会話に少しぎこちなさを感じながら
宏「お仕事中にすみません。」
「いえ。大丈夫です。穴場博物館なので。」
宏「穴場？」
きょとんとする荒木さんに少し笑いながら
「そうなんです。私はこの博物館をそう呼んでます。展示品や資料などは他の博物館に負けないのに人が少ないので。」
宏「確かに…。大きな有名なところと変わらないくらい充実してますよね。それに他には置いてない本とかもありますし。」
「全部館長の趣味だそうです。」
宏「ありがたいですけどね。人が少ないと周りを気にしないですみますし。」
「そうですね。自分のペースや他人の声や雑音を気にしないで集中できます。」
宏「それもありますね。」
「ん？」
宏「いえ。なんでもないです。じゃあそろそろ行きます。」
「はい。またいらしてください。」
荒木さんが言った言葉が引っ掛かりながらも見送る
とても不思議な時間だったような感じがした
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作者名：誠桜嘉永 | 作成日時：2020年8月21日 0時
