ずぶ濡れの恋模様。 ページ44
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────山田さんって、嘘つきですよね。
投げ掛けられた言葉に、私はゆっくり振り向いた。
「嘘つき?ごめん……何のことか分からない」
心臓はドキドキしてた。
でも表情には出さなかった。
彼女の言う通り、私は
嘘つきだ。
「私、上の階に居るから。何かあったら呼んでね」
濡れてずっしりした足を蹴りだし、私は階段を駆け上がった。
今すぐに、何か叫び出したい気持ちを抑えながら。
「あ、山田。こっちこっち」
図面を広げている先輩の元に近付き、私は傍に置いてあるパソコンの画面を覗いた。
「設計にミスがあったらこうなるまで気付かないなんて事ありませんよね?」
「そう思いたいけど……意外と単純な原因かもなぁ」
夜が明け、続々と人が集まってくる。
あまり眠ってないせいか、図面の細かい線を見すぎたせいか、目の奥がズキズキ痛む。
「電車が動き出したらもうちょっと人が来るから。そしたら順番に休憩回そう。あんまり詰めてると集中力持たないから」
「はい、分かりました」
肝心なことは何も分からないまま、時間ばかりが過ぎていく。
あちこち動き回ったり、色んな所に連絡を取ってるうちに時間はもう昼近くになっていた。
「部長どこに居ますか?休憩入ってもらいたいんですけど」
「部長は下。山田も一緒に休憩入れよ。な?」
「はい」
部長に声をかけるために、地下2階までおりる。
疲れのせいか、途中で足がもつれて階段を踏み外しそうになって、冷や汗をかいた。
「部長、休憩を」
「みんな取った?休憩」
「はい。あとは私たちだけです」
「俺……ちょっとコレ確認してから入るわ……」
タブレットを見ている部長の傍に寄り、私も画面を見た。
「山田どう思う?ここの配管がさ……」
「「え?」」
私たちは、同時に天井を見上げた。
タブレットの画面に、水滴が落ちてきたから。
「え……何で」
「ここ、水漏れ止まったよな?」
「はい。地下1階でポンプが……」
そこまで言って、私は部長と目を合わせた。
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作者名:ぽち。 | 作成日時:2019年4月17日 19時