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「仕事で抱えてる爆弾って何」









純奈と健太郎くんと別れたあと、二人きりの帰り道で嵐士がそう呟いた。









「……嵐士は、仕事で自分の弱味握られたことある?」









「ない。俺、弱味ねぇもん」









「あーそーですか」









「でも、Aと付き合ってる時はAが弱味だった」









「え?」









嵐士は遠くの通りを見るような目をして、少し笑う。









「映画みたいにさぁ、Aが人質に取られちゃって“会社の権利全部渡せ”とか言われたら……俺渡してたよ」









「嘘だぁ……」









「本当」









「じゃあ“別れるなら解放してやる!”って言われたら?別れた?」









「別れただろうね。愛情ってそういうことでしょ」









付き合ってる頃は“好き”とか“愛してる”とか言わない人だったのに。









変わったな、彼も。









「弱味って結局、自分が絶対守りたいもののことじゃん。人間の急所と一緒。命懸けで守りたいもの」









.









“本当に守りたいものの為なら、俺は自分のことなんてどうでも良いわ”









.









隆二さんの言葉を思い出す。









同時に“隆二”と呼び掛けたあの声も思い出して、私は頭を振りたくなった。









「A」









「ん?」









「相手の感情に乗せられんなよ」









「え?」









「お前の弱味握ってる奴の感情に乗るな。相手が苛立っててもお前は冷静でいないと。大事なもの、守りたいんだったら」









まるで、部下に言い聞かせるような口ぶり。









でも、だからこそ









「うん」









素直に頷けた。









────家に帰り着いたのは0時少し前。









隆二さんはまだ、帰ってなかった。









今夜は遅くなるかもしれないことは聞いていたけど、









誰と一緒なのか想像して胸がざわつく。









“相手の感情に乗せられんなよ”









そう、冷静に冷静に。









小田さんのことだけじゃない、さっきの電話のこともそう。









傍に女の人が居たからと言って、二人きりとは限らない。









“隆二”と呼び捨てにする仲の女友達が居たって不思議じゃない。









「大丈夫、大丈夫」









明日は隆二さんから誘われた飲み会。









小田さんのことはそのときに話してみよう。

3→←嘘と秘密の線引き。



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作者名:ぽち。 | 作成日時:2019年4月17日 19時

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