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嘘と秘密の線引き。 ページ40







「────A?」









純奈に呼び掛けられ、私はハッとして視線を上げた。









「どうしたの?ボーッとして」









「え……」









健太郎くんと嵐士も、私のことを見ている。









────今ね、隆二さんが、私の知らない女の人と一緒にいるの。









言えるわけない。









聞こえなかったフリをして切った電話の“プツッ”と言う音が、まだ鼓膜にこびりついている。









隆二さんを、あんな風に親しみを込めて呼び捨てにする関係の女性って誰だろう。









「何かあったの?」









健太郎くんに訊かれ、私は首を横に振った。









「ううん!今日試験だったから。ちゃんと出来たかなぁ?って考えちゃった」









「あぁ!そっか」









「試験って、そんな難しいやつだったの?」









嵐士はお箸を置き私に向き直る。









「全然!民間資格だし合格率8割越えてるような試験」









「そんな試験、建築関係であったっけ?」









「嵐士さーん。建築関係じゃないですよー」









純奈の言葉に「え?じゃあ何?」と嵐士は不思議そうな顔をした。









「アスリートフードマイスター。ね?A」









「う、うん」









「へぇ」









嵐士はちょっとニヤッとして私のことを見た。









「彼氏に献身的で何より」









「そんなんじゃないって」









「じゃあどんなんだよ。ねぇ?」









“うんうん”とみんなに頷かれ、私は苦笑いを浮かべた。









「Aのそういうとこ可愛いよね。仕事で爆弾抱えてるのに頑張ってさ」









「爆弾?」









「……良いから!私の話は!純奈と健太郎くんの指輪の話しようよ!嵐士なら良いジュエラーとか知ってるんじゃない?」









「って言うか嵐士さんが宝石王っぽい」









「ぽい!アフリカに鉱山持ってそう」









「あ、本当?じゃあ新しくジュエリー事業立ち上げようかな」









笑いがこだまする部屋の中で、私も大きな声で笑いながら二つの爆弾を抱えている自分を想像していた。









どちらももう、導火線に火はついている。

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作者名:ぽち。 | 作成日時:2019年4月17日 19時

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