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「でも、あの子は?ファンでしょ?右の人と1回でもお茶した?してないじゃん。嫉妬する位置まで行ってない」









願書も出してない学校に入学できなかったと怒ってるのと同じことだと、純奈は言った。









「あの子が会ってるのはライヴ空間における三代目の今市隆二。プライベートの今市隆二じゃない。そこを間違っちゃいけないでしょ、ファンなら……いい大人のファンなら尚更」










「でも、自分の身近に彼女居たら多少はイラッとなるのも仕方ない───」









「分かるよ?私だって好きな俳優さんに熱愛報道出たら“おいー、もうちょっと夢見せてくれよー”って思うもん」









「でしょ……だからね」









「だからAがいけないの?匂わせた訳じゃない、向こうがわざわざ嗅ぎ付けてきたのに?」









私は返す言葉が見つからず、黙って純奈を見るしかなかった。









 


「イラッとした気持ちをAに直接ぶつけるのはおかしいって。人間としての善悪の問題じゃなくて、自分の楽しみが奪われるか否かで行動してる。それ……許されないと思うな、私」









純奈は私のパスタを自分の方に引き寄せ“食べちゃうからね”とフォークを入れた。









「Aは、何にも悪いことしてない。平気な顔してたら良いの。向こうが“出来すぎた偶然を勘違いしちゃったかな?”って思うくらい平気な顔するの」









「うん……」









「右の人だって大丈夫って言ってくれると思うよ?Aのこと責めたりしない、絶対」









「うん……ありがとう純奈」









「明日は料亭だよ料亭!美味しいもの食べて元気出そ」









「うん」









純奈と話をしながら気付いたのは、結局私が一番恐れているのは自分が攻撃されることじゃなくて、









隆二さんに迷惑をかけてしまうこと。









“平気な顔してたら良いの。向こうが“出来すぎた偶然を勘違いしちゃったかな?”って思うくらい平気な顔するの”









純奈の言葉を頭の中で繰り返しながら、私は家路についた。









「ただいま」









“おかえり”の返事がないのは、隆二さんが今夜も遅いから。









話す時間がないのならと、私は小田さんとの出来事を手紙に書くことにした。









でも、何度書いても上手くまとまらなくてグシャグシャに塗りつぶしては丸めて捨てて、筆が進まない作家さんみたいになっていく。

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作者名:ぽち。 | 作成日時:2019年4月17日 19時

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