No.1510。12 (ページ36)

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裏切る舌。ページ36

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「聞かれたかも！？電話！？」

「そう……」

パソコンに表示されているのは社員の勤怠画面。

小田さんのところに“外出”と表記されているのを確認して、純奈と私は頭をくっつける勢いで密談中。

「“ねぇねぇ！今の聞いてた！？”とか訊ける訳もないって言うか訊いたとこでどうすんだって言うか……」

電話の件から２度、小田さんとは顔を合わせて仕事をした。

彼女はまるで、じわじわと犯人を追い詰める刑事のように、私に質問や雑談を投げ掛けてくる。

「昨日も一緒だったんだよね？どうだった？帰りの車、一時間くらい二人きりなわけでしょ？」

「例の有給の話してて……それでライヴの話されたんだよね。去年の12月の東京ドームの話」

それは、私が観に行ったライヴ。

小田さんは、アリーナの後ろの方で観たのだと私に語った。

小田さんが座った席、アリーナ前方にあったのは───

「関係者席！？A座ってた！？」

「そう……」

「何かさ……小田さん、ミニタオルの件より前に勘付いてた……？」

「そうとしか思えなくて……昨日のアリーナの話、彼女からの最後通告だったのかも」

どうして良いか分からず、私は頭を抱え自分の髪をクシャッと鷲掴みにした。

「一つ一つのことは“たまたま”で済ませられるけど……」

「合わさると“たまたま”じゃなくなる……」

「うん」

「だとしたら、やっぱり私のあの電話が決定打だよね……」

「うーん……本当に気付いてたとしてどう出るかなぁ」

「どうって……？」

「彼女と仲良くなる為に友好的に出るか、ムカつくから攻撃的に出るか……敢えて大人の対応に出るか」

「うん……」

「ねぇ、右の人には言った？」

「最近帰り遅いから言えず終い」

「そっかぁ……」

どうしたもんかな？と純奈が首を捻ったとき、フロアに小田さんが戻ってきた。

私は“すーっ”と息を吸い込み、彼女に近付く。

電話の件を聞くためじゃない。

仕事で確認したいことがあったから。