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「ね、ねぇ!私、おかしいとこない!?メイクとか大丈夫!?」
「大丈夫大丈夫!」
「ありがと!」
会社を飛び出した私は、電車を乗り継ぎ家へと急いだ。
玄関の灯り取りの窓から、うっすら光が漏れている。
彼が、中に居る証拠。
「ただいま!」
ドアを開け、リビングに駆け込んだ私の視界に入ってきたのは、
「おかえり」
冷蔵庫の前で水を飲んでいる隆二さんの姿。
「おかえりなさい……隆二さん」
「ただいま」
優しい笑顔、優しい声。
今聞いた“ただいま”は、本物の“ただいま”
数日後にはまた“バイバイ”をしなくて良い、本物の“ただいま”
嬉しいはずなのに私の瞼は熱くなって、それを誤魔化すみたいに隆二さんに飛び付いた。
「おかえりなさい」
「はい、ただいま」
さっきも言ったよと笑う隆二さんの顔を、私は愛しさを込めて両手で撫でた。
「ねぇ、キスして良いですか」
「えー、どうしよっかな」
悪戯に笑う隆二さんの返事を待たず、私は彼の唇に自分の唇を押し付けた。
押し付けた唇を彼の舌が絡めとる。
うっとりするようなキスをされながら、私は隆二さんを抱き締める腕に、更に力を込めた。
“もう、離れたくないよ”と言う代わりに。
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2017年の夏の始まり。
この夏、私は隆二さんへの愛を神様に試されているような出来事を経験するのだけど、
それはまた、別の話────。
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作者名:ぽち。 | 作成日時:2019年4月17日 19時