2 ページ28
・
「そう。本当に結婚するのその人で大丈夫?二人でこれからやっていけるの?って神様が試してんだって」
「結婚を神様の前で誓う前に神様に愛を試されるってことか……」
「そうそう。なるほどねーって思っちゃった」
神様に、試される────
だけど、純奈の表情を見てると、どんな難問で試されても“二人は大丈夫”って、心の底からそう思えた。
「ねぇねぇ、ロスどうだった?やっぱお姫様扱い?」
「何か……本当に保険金かけられてるかもって思うくらい……お姫様扱い」
「うぉおぉぉおーー!人妻はそういう話に飢えてるから詳しく聞かせて頂戴!」
コーヒーとビスコという組み合わせのおやつを食べながら、私はロスでの出来事を純奈に語った。
ひとつのエピソード毎に二人で足をジタバタさせ、私たちは年甲斐もなくはしゃいだりして。
「そろそろだね、右の人帰ってくるの」
「うん。あともうちょっと」
「いよいよ二人の生活だねぇ……私の方こそAんちに気軽に行けなくなっちゃう」
「何で、来てよ!9月からまた……」
私は周りに聞こえないように、純奈の耳元で「ツアーだし」と囁いた。
「相変わらず忙しいんだねぇ」
「ねぇ?」
休憩時間が終わり、私は自分のデスクでメールチェックを始めた。
有給の間に溜まったメールを返信しながら、隆二さんが帰国する日を指折り数える。
“Aは、俺が腐った水の中で溺れかけてたときに助けてくれた人だから”
腐った水────
あの頃、隆二さんに何があったんだろ。
酷く酔って帰ってきたあの夜、隆二さんには何があったんだろ。
「山田さん、ロス行ってたんですか?」
頭の上から降ってきた質問に、私は無言で顔を上げた。
「あっ……」
質問の主は、私が使っていたミニタオルの隆二さんに気が付いた後輩。
「ロス……」
「ロス、行ってらしたんじゃないんですか?」
好奇心で縁取られた瞳でそう訊ねられ、私は「うん」と頷く。
こういうとき、変に嘘をつくとどこかで綻びが出る気がして。
「彼氏があっちに居て。有給取れって部長にも言われてたしね」
629人がお気に入り
この作品を見ている人にオススメ
「芸能人」関連の作品
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:ぽち。 | 作成日時:2019年4月17日 19時