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「は?無理なんか1回もしたことないわ」
「でも、」
「Aは……」
隆二さんの頬を、木漏れ日と風が流れた────。
「Aは、俺が腐った水の中で溺れかけてたときに助けてくれた人だから」
「……え?」
「最初に会ったとき、思いっきり酸素吸い込んだみたいな感じがした。Aは俺の酸素」
「酸素?」
「当たり前みたいにそこにあって、でも……なくなったら、もう生きていけない」
────なくなったら、もう生きていけない。
自分の瞳が濡れていくのが分かって、私は咄嗟に俯いた。
「……泣き虫」
「……隆二さんのせいです」
「えー、そっか」
私は頬の涙を拭い、隆二さんに微笑みかける。
「私と会ったときに思ったことの3つ目ってそれでしょ?酸素」
「違う」
「まだ教えてくれない?」
「教えない。だってAも心意気部門の1位教えてくれないし」
「えー……じゃあ私が教えたら教えてくれる?」
「教えない」
「何それ!」
私は笑いながら、何度も隆二さんの言葉を噛み締めていた。
“当たり前みたいにそこにあって、でも……なくなったら、もう生きていけない”
隆二さん、それは
私も同じだよ。
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────暫くして、会場にスローテンポな曲が流れ出した。
お酒も入り、テンションの上がった感じの招待客がこぞって一ヶ所に集まり始める。
「え……あ、ダンスタイムですか!?」
広いスペースが設けてあるなぁと思っていたら、こういう時間の為だったのか。
「すごい!こういうの映画でしか観たことない!本当にあるんだー……」
夫婦なのか、カップルなのか、友達なのか
組み合わせは分からないけれど、みんな楽しそうに踊ってて私は文化の違いを新鮮な気持ちで眺めていた。
「んっ!俺らも踊ろ!」
急にグラスを一気に煽った隆二さんが、私の手を引いて立ち上がる。
「ちょ、ちょ、ちょ!」
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作者名:ぽち。 | 作成日時:2019年4月17日 19時