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生きていく糧。 ページ23











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「何書いてんの?」









ペーパーナプキンにボールペンを走らせている私の手元を、隆二さんが覗き込んだ。









「あ!隆二さん!お話、もう良いんですか?」









「うん」









隆二さんは私を一通りの人に紹介してくれたあと、写真を撮りに行ったりお話をしに行ったりあちこち駆け回っていた。









「で?何書いてんの?」









「レモネードのレシピ」









「はぁ!?」









「隆二さんが居ない間、女子トークしてたんですよ。で、こっちのレモネードが美味しいって話したら皆さん教えて下さって」









「へ、へぇ」









「一人、南部出身の方がいらして……ほら!あそこに居る女性!」









「あ、あぁ」









「そのレシピがまた違うんですよ。日本に帰ったら作ろうと思って今メモしてます」









「あぁ……」









「………」









「………」









「あ、あと!コスメの!」









「馴染んでるよね!?空港でも言ったけど馴染んでるよね!?良いんだけどね!ちょっとビックリするわ!」









馴染める空気があるのだと、私は思った。









日本では“私は怪しい者ではありません”を示す為に、相手のテリトリーには近付かない。









でも、こちらは逆で怪しい者ではないことを示す為に積極的に話しかけてくれる。









私の拙い英語でも、にこやかに対応してくれるのだ。









「私、今の会社入って良かったって思いました。どんな仕事してるの?って聞かれたら東京にあるビルとかタワーの名前言うとみんな分かってくれるから」









「あー!そっか!」









隆二さんは微笑んで、グラスに唇をつけた。









「それ何杯目ですか?」









「1杯目」









「嘘ばっかり」









「だってー、あっちでAのこと誉めてくれるからさぁ。気分良くなっちゃって」









「それお世辞ですよ、お世辞」









「ううん、本当に。でも“Aはティーンじゃないよね?”って聞かれちゃった」









「ティーン!?私が!?」









いくら日本人が若く見えるとは言え、そりゃないだろ。

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作者名:ぽち。 | 作成日時:2019年4月17日 19時

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