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「あぁ確かに。空想ですって言いつつ……」
「本当は実体験……私ならそうする」
「ん?」
「フィクションですって言いながら、本当のこと書く」
「書くって?」
「……隆二さんとの恋愛のこと」
ニヒッと笑って顔を近づけると、隆二さんは鼻先をぶつけて微笑んだ。
「書けたら見せてね」
「良いですよ。でもその前に本当にフィクションいっぱい書かなきゃ」
「“フィクションです”に信憑性持たせるため?」
「そう」
「計画的だなぁ」
「へへっ」
何にせよ、娯楽にも知性は必要。
読む才能がない人は書けないし、書く才能がない人は読めない。
読書感想文が良い例。
私は何度“人間失格”を読んでも、主人公とタイトルが結びつかない。
主人公の生き方は、結局人間の本質なのではないかと思うから───。
「車で行こ」
「え?」
「天文台には車で行こ。ホテルまで車持ってきてくれるから」
隆二さんはそう言うと、あっという間に寝息を立て始めた。
私は本を読むのをやめて、眠ってる隆二さんの頬や腕を指で撫でた。
愛しくて、どこかに触れていたくて仕方ない。
隆二さんも私の髪や頬をよく撫でてくれるけど……同じ理由だと良いな。
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「マ、マスタング!?」
天文台へと出掛けるためにホテルの正面玄関を出た私は、目の前に現れた赤く輝くオープンカーに度肝を抜かれた。
「こ、これ用意してもらったんですか!?」
「どうせだったらオープンカーが良いなぁとは言ったけど……赤いマスタングとは思わなかったなー……やばー」
隆二さんは車の周りを一周回って、キーをかざす。
そして、助手席側に回り込み「乗って」とドアを開けた。
「何か……緊張する」
「何でよ。綺麗な彼女見せびらかすためにオープンカーにしたのに」
「ま、また!そういう変なこと言って」
「ほーら。どうぞ」
隆二さんのエスコートに私は覚悟を決め、キュッと唇を持ち上げ軽く膝を折ってからシートに乗り込んだ。
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作者名:ぽち。 | 作成日時:2019年4月17日 19時