No.1510。12 (ページ15)

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月までドライブ。ページ15

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「Aー、どっか行かないのー？」

「来たじゃないですか、公園に」

「公園じゃーん」

二日目のこの日、天文台に行くまでの時間を、私は公園で過ごすことにした。

広々とした、芝生の良い匂いのする公園の日陰のベンチ。

のんびりするには最適な場所だと思うけど、隆二さんは納得いってないみたい。

「色々あるよー？ディズニーランドとかぁ」

「ディズニーかぁ……」

「あ、Aは無理か。滝壺に落ちるやつ乗れなくて拗ねちゃうもんね」

「……拗ねてない」

「泣いちゃうもん。ベンチで。無理か」

「泣いてないしディズニーランド半日じゃ無理だし！隆二さんもたまにはのんびりしないと」

「俺別にこっちで忙しくしてないけど」

「でも製作活動してるんだから集中したり緊張したりはしてるでしょ？」

「まぁ……ね」

隆二さんはゴロンと私の膝に頭を乗せ、私はバッグから文庫本を取り出す。

「あー……寝ちゃうかも」

「うん」

「Aが俺のこと無視して本読んでるから寝ちゃうかも」

「無視はしてないじゃん」

私はクスクス笑いながら、隆二さんの髪を撫でた。

眩しい太陽と好きな人の頭の重みを感じながらの読書タイム。

隆二さんは欠伸をひとつしてから、私の足に手を這わせた。

「何読んでんの？」

「人間失格」

「……チョイスおかしいだろ」

「慌てて荷物詰めたらコレだった」

隆二さんは軽く笑い、私の腰に腕を回す。

「それ“人間失格”って自伝なの？何かそう言われてるよね？」

「よく知ってますね！」

「バカにしてる……！それくらい知ってるわ！で？自伝なの？」

「フィクションってなってますけど……本当のところは書いた本人にしか分かりません。これを書き上げた1か月後に命を絶ってますから、遺書に近かったのかも」

「へぇ……」

「でも……“これはフィクションです”って言い切った方が思いっきり本音を書けますよね」

「え？」

「隆二さんもそうじゃない？実体験ですって歌詞を披露するより“空想です”って建前があった方が書きやすくない？」