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「ほら！行くよ！」

「ダメ！ダメダメ！」

「あー、じゃあAは良いんだ？俺が“リュウジハ、カノジョニモールデカッタドレスキセルンダネ！HAHAHA！”って言われても」

「それ誰？ブライアン？めっちゃ日本語上手」

「誰でも良いわ！行くぞ！」

「隆二さぁぁあぁん！」

メルローズアベニューに私の声が響いて15分後────。

私は着せ替え人形になっていた。

“似合うの選んであげて”と隆二さんが言ってくれたお陰で、店員さんも本気だ。

次々にワンピースやドレスを持ってきては、質問をしてくる。

“日本人の女の子はどうして華奢なの？”
“ヘアアレンジにどれくらい時間をかけるの？”

どんな高飛車な店員さんが居るのかと思ってたけど、みんなフレンドリーで丁寧。

「もう少しスカートの丈が長めの……ミモレ丈！……ミモレ丈って英語でなんて言いますか？」

「知らなーい」

ソファに座って、楽しそうにその様子を見ている隆二さん。

「あ……ankle length」

“OK”と返事が来たので通じたみたいで良かった。

「隆二さんはあるんですか？スーツ」

「あるよ。こっちで調達した」

「そうなんだ……」

「何で？」

「あの……ワンピースをプレゼントしてもらうお礼に、私も何かって思ったんですけど……」

そのとき“これはどう？”と持ってきてもらったワンピースに、私は一瞬で心惹かれた。

薄いベージュのワンピース。

デコルテから長袖の部分はシースルーのレースで仕立てられていて、丈も希望通りのミモレ丈。

派手すぎず、地味すぎず、ガーデンパーティーにピッタリの１枚だと思った。

「こ、これ、どうでしょう」

「着てみて」

隆二さんが指差した試着室に入り、背中のファスナーを開けようとして、ふと指が止まる。

「PRADA……」

何故か値札らしきものが見当たらないけど、何となく想像はつく。

「値段は気にしちゃダメなんだよー？」

ここの試着室には隠しカメラでも付いてるの？と思うようなタイミングで隆二さんが声をかけてきた。