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「あの……と、取り合えず中に入りませんか?」
隆二さんの素敵な瞳が“入れちゃ駄目だ”と言ってるけど、大の大人4人が決して広いとは言えない玄関先でゴチャゴチャ言い合ってるのもどうかと思う。
「臣くん、家の中見たいんですもんね。大したことないですけど、どうぞ」
私は3人分のスリッパを並べ、リビングへと小走りで先回りした。
照明を点け、ヒーターのスイッチを入れ「お茶でも」と振り向くと、
「やべぇー、広いし良いじゃん。マイホームじゃん」
臣くんは既に足を組んでソファにふんぞり返っていた。
「良い部屋じゃーん」
「あ、ありがとうございます」
「あー、牛スジ入ってるー」
ハッとしてキッチンの方を見ると、岩ちゃんが土鍋の蓋を開けていた。
「良いなー、おでん」
「あの……」
この人たち、何でこんなフリーダムなの。
「……お茶淹れます。どうぞ座ってください」
ダイニングテーブルに突っ伏している隆二さんを気にしながら、私は二人にお茶を淹れ、さてどうしようかと頭をかいた。
隆二さんの大事な話を一刻も早く聞きたいけれど、二人をさっさと帰すのも失礼。
「どうしよ……」
「Aちゃん、おでんまだ?」
「え!?食べるんですか!?」
私はもうすぐでダイニングテーブルと一体化しそうになっている隆二さんの肩を叩き、耳元に唇を近づける。
「隆二さん、臣くんがご飯食べてくって言ってます。どうしますか」
「……好きにして」
「えぇ……」
普段なら“どうぞどうぞ”と喜んで一緒に食べるところだけど、今日は何せ“大事な話”がある日。
「ちくわぶは入れないの?」
まだ土鍋の中を観察していた岩ちゃんに、私は「馴染みがなくて」と答えエプロンを手にした。
折角うちまで来てくれたんだし、大事な話は二人が帰ってから聞けば良い。
「よし」
土鍋を火にかけ、私は食器やグラスを用意する。
具材を入れて煮込んでる間も、隆二さんは突っ伏したまま。
岩ちゃんはリビングの本棚から取った建築の写真集をパラパラしてて、臣くんはソファに寝転がってテレビを観てる。
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作者名:ぽち。 | 作成日時:2019年3月8日 21時