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「岩ちゃん、今日はありがとうございました」
私が頭を下げると、岩ちゃんは不思議そうな顔をした。
「なんで？お邪魔したの俺なのに」
「私のこと、励ましに来てくれたから」
「そんなカッコいいもんじゃないけどね」
白い歯を見せて笑った岩ちゃんは「じゃあね」と爽やかな残り香を漂わせて家を出た。
「……やっぱ貴族だ」
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「ただいまー」
夕食の支度をしている最中に隆二さんが帰ってきて、私は「おかえりなさーい！」と玄関に向けて叫んだ。
「今日ご飯なにー？」
部活終わりの高校生か！と言いたくなるような台詞に、私はバッドに置いていた唐揚げを菜箸でつまみ上げた。
「唐揚げ！テンション上がる」
「あ、隆二さん！ピアノ搬入されたから見てきて！場所とか位置とか」
「オッケー」
空き部屋……じゃなくて今はもう“ピアノ部屋”になった部屋のドアを開けた隆二さんは、暫くして“うんうん”と納得したように部屋から出てきた。
「あれで大丈夫。ありがとね」
「いえいえ、良かったです」
隆二さんはキッチンの私の隣に立ち、唐揚げに手を伸ばす。
「あ、ダメダメ！それ今から二度揚げするやつ！」
「え？そうなの？なんだ」
手を引っ込めた隆二さんは、シンクの縁にもたれコキッと首を鳴らした。
「今日ね、岩ちゃん来ました」
「岩ちゃん？なにしに？」
「お話しに」
「へぇー。何の話？」
「……貴族の話」
「なんだそれ」
隆二さんは深く追求せず、肩を揺らして笑ってる。
「ん！実家行ってきたんですよね？どうでした！？お母さん喜んでました！？」
「喜んでた。そんで“綺麗な子ねー”って言ってた」
「誰のこと？」
「Aのこと」
「は……？」
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作者名：ぽち。
| 作成日時：2019年3月8日 21時
