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ヒーローは応援してくれるみんなのためにいつも正義で、いつも強くて、いつも戦って、そしていつも……ボロボロになってる。
だから“ただいま”ってうちに帰ってきたら、名前もないようなチョイ役になって欲しい。
危機的状況に、真っ先に逃げ出すような人で良い。
「名誉の戦死なんて、望んでない私。正義のために倒れるなんてカッコ良いこと要らない。カッコ悪くても何でもいいから、私の前では素の隆二さんで居てほしい」
今夜すごく嫌なことがあったんだ。
詳しくは話せないんだけど凄く疲れた。
そう言ってくれたら、私は何時間でも隆二さんを抱き締めた。
抱き締めて、眠った隆二さんにキスをする。
明日は幸せな日になりますようにと願って───。
「それが、私からのお願いです」
隆二さんは私の手の下から自分の手を引き抜き、私の手を握りしめた。
「……Aにはダサいとこ見せたくなくて……でも、結局一番カッコ悪いとこ見せたね、今日」
「良いの、それで。ね?」
「はい」
「それと……」
「ん?」
「私、傷付いてはないんですけど、あの“どいて”は……あれは堪えました。だからもう……あれはしないで」
言った途端、引っ込んだはずの涙が一気に溢れてきて、瞼のふちに溜まって
「ごめん……ごめん」
ポロポロと頬を流れた。
隆二さんは私を抱き寄せ、私は膝を抱えた体勢のまま彼の胸に頭を預けた。
「手で押し退けるとかあんまりですよ……」
うぅーっ、と決して可愛くない泣き声を上げる私の肩を何度も撫でる隆二さん。
「ごめん!本当にごめん」
隆二さんの謝意は充分伝わってきてるのに、どうにも涙が止まらなくて。
「怖かったよー……」
「ごめんね?本当……あの、どうしよ?どうしたら良い?」
「う"ぅー……」
不格好な泣き声を出しながら、私はかなりの時間、隆二さんの胸で泣きました。
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作者名:ぽち。 | 作成日時:2019年3月8日 21時