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惚れ惚れする推理力……とは言えず、私は何て言おうか迷った。

下手に言い訳すれば、まだ嵐士に気持ちがあるみたいで嫌だし、だからと言って開き直るのもおかしい。

「まぁ……良いんだけど」

隆二さんはそう言って、すっかりぬるくなったビールを喉に流し込んだ。

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その夜は隆二さんが先にお風呂に入って、私はあとで一人で入った。

髪を拭きながらリビングに戻ると、庭のデッキに胡座をかいて座っている隆二さんの後ろ姿が見える。

私は窓を開けデッキに座り込み、その背中にそっと頬をつけた。

「……嘘ついてごめん。隆二さん」

ゆったりとした呼吸の感覚が、彼の背中を通じて伝わってくる。

「気分悪かったですよね……ごめんなさい」

「……なんかさ」

「うん……」

「前の彼氏の話も聞いてたし今まで恋愛してきてて当たり前だし、頭では分かってたんだけど目の前に現れると落ち込む……って言うか」

「うん………」

隆二さんは体の向きを変え、私と向き合う。

「気分が悪くなったとかはないよ。Aは俺にちゃんと言おうとしてた」

「でも、」

「それに、咄嗟にああいう対応出来る人が前の彼氏で良かった。すげぇ輩みたいな奴だったら嫌じゃん」

「隆二さんも」

「ん？」

「隆二さんも大人の対応でした。私だったら、隆二さんの前の彼女と遭遇したらもっと動揺して取り乱します」

「アイアンマンなのに？」

「最近メデューサ」

「はぁ？」

隆二さんの笑い声が庭に響いて、私は肩をすくめる。

「……俺、Aはずっと俺だけの彼女みたいな気がしてて」

「え？」

「初めて会ったときから、ずっと俺だけの彼女みたいな気がしてた……思い上がりってやつ？」

自嘲する隆二さんの手を、私は無意識に握りしめていた。

「多分、それもあって落ち込んだのかなぁ……」

「どうして、そう思ったの？」

「んー……分かんない」

私は小さく微笑み、隆二さんは握っている手を軽く揺らした。