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長いようで短くて……やっぱり長かったこの1ヶ月。









隆二さんは、どんな風になってるかな。









最初に、何て声をかけようかな────








そわそわしながら待っているけど、それらしき人が出てくる気配はない。








私は首をかしげ、フライト案内を見上げた。









「あっ」








19時45分到着予定の便名の横には“DELAYED”の表記。









飛行機に遅れが出て、到着予定時刻は不明の意味。









「うそ……」









どうにも神様は私たちを真っ直ぐ会わす気がないらしい。









どこかで時間を潰す気にもなれず、私は到着ロビーでただぼんやりと突っ立っていた。








先に到着した飛行機から、続々と人が出てくる。









再会を喜ぶ家族の隣で、自然と私の頭は下へと項垂れていって───









.









.









.









「誰待ってんの?」









.









.









突然耳元に話しかけられて、私は飛び上がりそうになりながら振り向いた。









「え……」









キャップのつばを少しだけ指で押し上げた隆二さんが、私のお腹に腕を回し微笑んでいる。









「誰待ってんの?」









「……隆二さん」









「あー隆二さんはひとつ早い便で帰ってきたみたい」









私はゆっくり何度も瞬きしながら隆二さんを見上げ、これが夢じゃないことを確かめた。







「ビックリした?」









「しました……」









「ロスに行ってから意地悪になったって言うからさぁ。意地悪してみよっかなぁって」









腰を抱かれたまま、私は隆二さんに「もう……」と言って、









彼の胸にしがみついた。









隆二さんは私の頭を撫で、髪にキスをする。









「ただいま」









1ヶ月ぶりの抱擁と、その香り。









「おかえりなさい」









あのね、うちの会社に、ファンの人が居たんです。









庭の樹に、小さな花が咲いたんです。









うちの空き部屋に、ワックスをかけ直しました。










ピアノの置場所はどこが良い?









話したいことはたくさんあったのに、隆二さんの胸の中だと何も言えなくなる。









そんな私の気持ちを知ってるみたいに、









隆二さんは“あと5分”とは言わず、いつまでもいつまでも









きつく抱き締めてくれました。

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作者名:ぽち。 | 作成日時:2019年3月8日 21時

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