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久しぶりの長電話、隆二さんがあくびを噛み殺した息遣いを感じて、私は「そろそろ寝ますか？」と切り出した。
“うーん……あと5分だけ”
「じゃあ……5分だけ。あ、ねぇ隆二さん」
“ん？”
「帰ってくる日、空港まで迎えに行っちゃダメですか？」
“あれ？空港はセンチメンタルだから嫌なんじゃないの？”
笑いを含んだ声に、私はポリポリと頭をかく。
「お迎えは別……」
“へぇー、そうなんだ？”
「何か、隆二さんロス行ってから意地悪になった……」
“そういうのも嫌いじゃないくせに”
「んー……」
私たちはそのあと3回“あと5分”を繰り返して、電話を切った。
私は携帯を握り締めたまま、素足で庭のデッキに出る。
「あと10日……」
春の匂いに、緑の風が混じり始める頃、隆二さんが帰ってくる。
１ヶ月ぶりの再会。
どんな言葉で、彼を迎えよう────。
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「山田！」
その日、会社を出ようとした私を部長が呼び止めた。
「な、何ですか？出張には行きませんし飲み会にも参加しませんよ！今日は！」
「誰もそんなこと言ってないのに……」
シュンとした部長は、私に紙を１枚手渡した。
「有給。早く申請しろよって話。ん！」
「あ、ありがとうございます。早めに出します」
ペコッと頭を下げ、私は駐車場へと走り出す。
「混んでませんように混んでませんように……」
祈るような気持ちでナビを成田空港へと設定。
平日の夜、いつも渋滞を起こす山手通りの一部を除けば順調そう。
「よーしよし！」
ふっと短く息を吐き、私はハンドルを握りアクセルを踏み込んだ。
────成田空港、第一ターミナル南ウィング。
国際線到着ロビー目掛けて走った私は、隆二さんが出てくるのを今か今かと柵から身を乗り出して待っていた。
“Aが迎えに来てくれるならスタッフには一人で大丈夫って言っとくわ”
隆二さんが言っていた通り、周りには家族の帰国を待つ人や旅行会社の人らしき人しか居ない。
空港独特のざわめきの中、胸がときめくような緊張感が私の全身を包んでいた。
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作者名：ぽち。
| 作成日時：2019年3月8日 21時
