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“どうした!?は?彼女に電話しちゃいけないのかよー”
「ううん!良い!すごく良い!」
何せ私は干からびる寸前だったから。
「でも、そっち真夜中ですよね?」
“中々電話出来なかったし、5月の頭に1回帰れることになったから、その報告”
「え!?5月!?本当!?」
“ほんとー”
私は慌ててカレンダーにペン先を立て、隆二さんの帰国日にグルグルと丸を書いた。
「私!絶対出張の予定入れませんから!」
“そうしてくれると俺も嬉しいわー”
私はキュッと口角を上げ、少しだけリビングの窓を開けた。
春の風が、優しく部屋の中に吹き込んでくる。
「隆二さんどうですか?そっちの暮らし。充実してますか」
“うん、してる。勉強になることいっぱいで……でもねぇランチはシーンとしてる”
「どうして?」
“……俺があんま英語喋れないから?”
そういう理由?と笑う私に、隆二さんは“バカにしてる”と同じように笑った。
「寡黙な男二人のランチタイム、覗いてみたいかも」
“え、Aは英語出来る人?”
「すこーしだけ。医療用語とか法律用語は全然分かりませんけど」
“へぇ……”
「あ!ロスにも行ったことあるんですよ!純奈と。とんでもない珍道中だったんですけどね」
“いつ?いつ行ったの?”
「えっと、隆二さんと別れてた時だから……まだ1年経ってないくらい?」
“ふーん……言葉に問題なくてロスに来たこともある……西海岸まで来てくれるって話はあながち冗談じゃなかったわけね”
「冗談だと思ってたんですか?酷いなぁ」
────あのね、うちの会社に、ファンの人が居たんです。
庭の樹に、小さな花が咲いたんです。
うちの空き部屋に、ワックスをかけ直しました。
ピアノの置場所はどこが良い?
話したいことは色々あるけど、今は自分が喋るより隆二さんの声を聞いていたくて
“ロスにも天文台あるんだけどさ、純奈ちゃんと行った?”
「グリフィス天文台でしょ!?行ってない!」
私は聞き役と答え役に徹した。
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作者名:ぽち。 | 作成日時:2019年3月8日 21時