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電球の明るさの問題じゃなくて、照明器具そのものが遠くにあるみたい。
「はぁ……」
冷蔵庫の中が保存容器でいっぱいになった頃、携帯が鳴り出した。
こんな中途半端な時間に電話してくるのは大抵会社だ。
私はノロノロとテーブルに近寄り、ろくに画面も見ずに携帯を耳に当てる。
「はい」
“あ、俺”
「なんだぁ、嵐士か」
電話は、前の彼氏の嵐士からだった。
“なんだぁって何だよ。日本に帰ってきたから電話したのに”
「嵐士が帰ってきてもなぁ……」
“はぁ?”
愚痴愚痴した言葉を前の彼氏にぶつけるのは良くない。
「今日帰ってきたの?」
“うん。暫くこっち居るから飯でもどうかなぁって”
「飯……」
飯なら冷蔵庫にパンパンに詰まってる。
だからと言って嵐士を家に招くのも……。
「今度、純奈と三人でどう?」
“純奈ちゃんと?”
「うん。二人きりじゃなくて……」
嵐士は何かを察したのか“あぁ”と呟いたあと“なるほどね”と続けた。
“どんな奴?”
「え?」
“彼氏。どんな奴?”
「……私と付き合う人、みんな海外行っちゃうみたい」
嵐士は笑い声を上げ“Aと付き合う男は出世するんじゃないの?”とまた笑いだした。
“なに?商社か何かに勤めてる人?”
「んー……まぁ、そんな感じ」
取り扱ってるのは“夢”と“歌”な個人商社な人。
“ふーん。じゃあ影ながら応援してるわ”
「ありがとうございまーす。嵐士も早く彼女見つけてね。綺麗で賢くて嵐士のこと大事に、」
“余計なお世話”
電話はそこでブチッと切れた。
「き、切った!」
何かムカつく、と思っていると再び電話が鳴り出し、私は携帯に掴みかかった。
「急に切ることないじゃん!」
“え……もしもし?”
「……隆二さん?」
“何?その意外そうなリアクション”
クスクスとした笑い声に、私の胸は跳ね上がる。
“誰かと電話してた?急に切ることないじゃん!って言ってたけど”
「あの、はい、ちょっと……って言うかどうしたんですか!?」
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作者名:ぽち。 | 作成日時:2019年3月8日 21時