人生が変わる日。 ページ1
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────ライラックの花束を、隆二さんと一緒に公園の広場の隅にそっと置いた。
二人でしゃがみこんだまま、私は公園で笑い声を上げる子供たちに目を細めた。
「隆二さん。今日一緒に来てくれてありがとう」
「ううん」
「隆二さんが行こうって言ってくれなかったら、私一生来られなかったかも」
「そんなことないよ」
「そんなことある!」
私が急に大きな声を出したので、隆二さんはちょっと体を反らせる。
「私は、希望の光を自分で作るしかなかったんです。寄り掛かれる人が居なくて、自分がヒーローになるしかなかった。世間に認められるために努力をして、責任を持ってって」
「うん……」
「私ね、会社でアイアンマンって呼ばれてて」
「アイアンマン!?」
「そう。鉄の女なんだって」
私が笑うと、隆二さんも眉を寄せて笑い出した。
「やめてよーって言いながらも、何かちょっと嬉しかったんですよね。強くて逞しいヒーローの名前が付いてること」
大きくなるってことは、強くなること
大人の女性になるってことは、誰にも頼らず一人で生くこと
自分を助けてくれるヒーローは、自分の中にしか居ないと思ってたから。
「でも隆二さんは、努力しなくても頑張らなくても、ダメな私でも……全部受け入れて私を救ってくれました。今日だけじゃなくて、何度も」
つま先だけで崖の先に立ってる私の腕を引っ張ってくれたり、
落ちても大丈夫なように腕を広げて待っててくれた。
「だからね……」
またじわっと涙が出てくる。
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「だから、隆二さんは私のヒーローです」
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私は涙も拭かず笑った。
笑顔は言葉より多くのものを届けてくれるから。
「ヒーロー?俺が?」
「うん」
「何それ、かっこいいじゃん」
隆二さんは笑って、大きなその手で私の頭をクシャクシャっと撫でた。
“あなたは、望まれて望まれて産まれてきました”
“あなたがこれから歩く道が、希望の光に満ち溢れていますように”
父と母が言ってくれた通り、私の歩く道に、光がさしてる。
この眩しい夕陽みたいに、私の未来に光がさしてる。
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作者名:ぽち。 | 作成日時:2019年3月8日 21時