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テーブルの上のフルーツとシャンパンに出迎えてもらった部屋は、バリの伝統建築とモダンを掛け合わせた内装。

広い広い部屋の天井は高く、そこにファンがクルクルと回っている。

「ここ、開くのかな？」

部屋の稼働式の壁を思いっきり開けると、そこに現れたのはライトアップされたプールと遮るものが何もない、高台から臨む夜のインド洋。

「きれい……絵はがきみたい」

空港と海沿いのお店の光りが灯る水平線。

空に浮かぶ、星と月。

優しく頬を撫でる潮風に目を細めていると、ふわっと後ろから抱き締められた。

「気に入った？」

「すごく！私、リゾートって初めてで……ありがとう隆二さん。連れてきてくれて」

「あー、Aのその笑顔見れたから俺もう帰っても良いわー」

「……だめだよー……」

「いや嘘に決まってんじゃん！俺どんだけこの日待ち焦がれてたと思ってんだよ」

「……本当？」

「本当」

私のことをギュッと抱き締めた隆二さんは「早く二人になりたかった」と耳元で囁いた。

「……私もです。何か……今こうしてるの嘘みたい」

「俺もそう思う」

隆二さんは私の髪を耳にかけ、そのまま優しく抱きすくめた。

「１年前の今頃、こんな風に過ごすの想像出来なかったじゃん」

「うん……出来なかった」

「Aが今ここに居るの嘘みたい」

その熱っぽい目で見つめられ、私は彼の背中に腕を回す。

耳に聞こえるのは、波の音と隆二さんの鼓動。

私の胸の音も伝わるように、回した腕にギュッと力を入れた。

「何かさ……」

「うん」

「さっきからチラッチラ視界にベッドが入ってきて正気じゃ居られないから一旦シャンパン飲んで良い？」

私は吹き出し「私も飲む！」と、テーブルに近付いた。

シャンパンを少しだけグラスに注ぎ、隆二さんがひとつ私に差し出す。

「はい。えーっとね……あ！4日間楽しく過ごせますように」

「はい！過ごせますように」

私たちが見つめあって合わせたグラスの音が、

部屋の中に、柔らかく響いた。