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────彼女はとても聡明な人です。









とても愛情深くて、優しい人です。









海と船と星が好きで、あれがお父さんお母さんって夜空を指差す可愛い人です。









そして、強がりです。









何故強がりかと言うと、そうしなければ挫けてしまいそうなことに触れて生きてきたからです。









本当は、繊細でか弱い人なのに。









だから俺は、そんな彼女を守りたいと思いました。









彼女が強がらなくて良いように、守りたいと思いました。









彼女は俺の大好きな人です。









「──って、言う」









隆二さんはそこまで一気に喋って、小さく息を吐いた。









「でも絶対に事務所が言わせてくれないよねぇ」









“それこそ問題児だよ俺”と笑った隆二さんの表情が、









パッと曇った。









「……え、A泣いてる?」









隆二さんが驚いた顔をして、私は咄嗟に首を横に振る。









「泣いてないよ?太陽見すぎたせいかな?何か、瞳がやられちゃったみたいで……」









言ったそばからポロポロ涙が溢れてきそうで









私は泣き顔を隠すように隆二さんの首筋に顔を埋めた。









私を語る隆二さんの言葉や声がとても優しくて、









涙が出てくる。

















そして、隆二さんが優しい言葉を紡ぐ度









私の胸は切なくなる。









こんな風に大事にしてくれる隆二さんの気持ち、急に冷めたらどうしようって……。









人間失格に、こんな一文がある。









────弱虫は、幸福をさえおそれるものです。









それと、似てるのかな。









何かに気が付いたみたいに隆二さんが私を抱き寄せて、私の髪が水面に揺れる。









「大丈夫?」









「うん……」









逞しいその体に抱かれると、不思議と不安が消えていく。









自分の体も、大きくなった気がするから?









「隆二さん」









「はい」









「……呼んだだけ」









水の中でも確かに感じる隆二さんの温もりが愛しくて、彼の体からは何だか出会った頃の匂いがした。









「隆二さん」









「はい」









「隆二さん、浮ける?」









「へ?」









水泳を習ってた隆二さんは、浮くことなんて文字通り朝飯前。

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作者名:ぽち。 | 作成日時:2019年2月5日 20時

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