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「……隆二さん、何者？」

「はぁ！？」

「こんな凄いこと……私、してもらったことない」

「“あ！これ知ってるよ！”って言われなくて良かったわー」

「何か……あ、分かった、夢？」

「現実。現実」

呆けたような顔をしてる私が可笑しいのか、隆二さんはずっと笑ってる。

「早く乾杯しよ」

「はい……あ、待って！」

私は椅子から立ち上がり、バッグの中からマノロのサンダルを取り出した。

「こんな素敵なとこでビーサン履いてる私が許せない！」

靴を履きかえる私を見て、隆二さんはまた笑う。

「はい！履き替えた！オッケー！完璧！」

椅子に座り、軽く髪を直して私は「ふぅー」と息を吐いてからグラスを持った。

「明日の夜までだけど、ゆっくり過ごすのは今夜が最後だから……それに乾杯」

「乾杯」

グラスを鳴らしたあと、隆二さんは「乾杯の言葉って難しいよね」と、照れ笑いをした。

照明のない、キャンドルだけの柔らかい灯り中に浮かび上がるその笑顔が素敵で、私は目眩に似た恍惚感を覚える。

「最初の料理なんだろー！？楽しみですね」

「あれじゃん？さっきの屋台のおじさんが鳥持ってきてくれる」

「それ最高じゃないですか！」

笑い声が響く渚。

最後の夜は、

始まったばかり。