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大丈夫かな？と隆二さんの様子を伺いながら、レストランへと続く道を曲がろうとした私の腕を、
「こっちこっち」
彼は反対の方へと引っ張った。
「あれ？お部屋で食べるんですか？」
「違う違う」
「ん？」
犬の散歩みたいに隆二さんに引っ張られたまま歩いて、
「え……」
私はサンダルからズザッと音がする勢いで足を止めた。
「最後の夜だから、ここで食べよ」
「嘘でしょ……何これ……」
ヴィラの小道の途中、小さな階段を下りた先にバレがあった。
バレは日本で言うところの東屋で、南国らしく茅葺きの屋根に柱だけの開けたスペースになっている。
そこにはセッティングを終えたテーブルと、椅子が２脚。
私が何より驚いたのは、そこに繋がる階段とバレを取り囲むように置かれている無数のキャンドルと、プルメリアの花。
すっかり暗くなった景色に、キャンドルがキラキラと灯っていて……これを“ロマンチック”と言わず何をロマンチックと言うのだろう。
「足元気を付けて」
何が何だか分からないまま隆二さんにエスコートされ、私はスタッフの人が引いてくれた椅子に腰を下ろした。
最初に運ばれてきたグラスを持っても、まだ私は状況が飲み込めずに目を泳がせている。
「コーディネーターさんと旅行の打ち合せしてるときコレ見つけてさぁ。絶対やりたーいと思ってたんだよね」
楽しそうに笑ってる隆二さんと、少しずつ事態が飲み込めてきた私。
「良くない？完全な二人きり」
そう言われて、私は改めて周りを見渡す。
ここにあるのは、渚のバレとキャンドル。
花と波の音。
私たちの為だけにセットアップされた空間。
そして、隆二さんと私────
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作者名：ぽち。
| 作成日時：2019年2月5日 20時
