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「どうしたの、この花」

“散歩してたらいっぱい落ちてたから拾いながら歩いた”と、私は白紙の便箋に走り書きをした。

隆二さんは机いっぱいのプルメリアのひとつをつまみ上げ、指先でゆっくり回しながら私に微笑んだ。

「拾ってきたの？」

“うん”

「可愛いね」

“そうでもないよ”

「……俺が悪かったよ！いい加減喋ってよ！」

私と隆二さんは同時に吹き出し、ひとまず花を机の一ヶ所に集めた。

隆二さんに引き寄せられ、私は椅子に座っている彼の膝の上へ。

パッと便箋を裏返したところを見ると、本当に詞を書いてたみたい。

「私、邪魔ならどっか行ってますけど……」

「机の上でお花屋さん開いといてよく言うよー」

「ごめんなさい……ちょっとやってみたくて」

隆二さんは首を横に振り、隣のビーチでも行ってみる？と私の頬を撫でた。

「うん！行ってみたい」

流石にずっと水着とワンピースという訳にはいかず、私は白いサマードレスに着替えて髪を下ろした。

ビーチを歩くのだから足元は当然ビーチサンダル。

そのままレストランにも行けるように、バッグの中にマノロのサンダルを入れた。

「行ける？」

「行けます！」

ヴィラの敷地内のビーチと違って、そこは賑やかだった。

屋台が出ていたり、地元の人が涼んでいたり。

活気ある感じで自然と心がワクワクしてくる。

「隆二さん！あそこの屋台で鳥焼いてる……食べてみよかな」

「大丈夫？ガイドさんがお腹壊すこともあるって言ってたよ？」

「え……それは困る……」

今夜二人きりで過ごしたら、明日の夜には帰りの飛行機に乗らなければいけない。

最後の夜にトイレに籠城は……。

「夜、ヴィラで食べれば？」

「うん……そうする」

香ばしい香りに後ろ髪を引かれながら、隆二さんと私はビーチで少し遊んで────

「おーし、戻るか」

「え？もう？」

「予約してるからさぁ」

「あ、レストラン？あの良い席？」

「そうそう」

最後の夜、眺めの良い席を取ってくれた隆二さんに「ありがとう」とお辞儀をし、私は彼のあとを着いていく。