独占欲。 ページ14
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ホテルに帰ってきてから、私たちは雨に濡れた体をシャワーで流し、バスタブで体を温めた。
さっきまでのどしゃ降りが嘘だったみたいに、外は晴天。
太陽が燦々と降り注ぐバスタブの横には、キャンドル、お香、バスソルトが置いてあって、隆二さんはマッチを擦りお香に火を付けた。
「良い匂いですね」
「バリっぽい匂い」
広いバスタブでお互いバスピローに頭を預け、向かい合ってのリラックスタイム。
隆二さんは目を閉じて、両腕をダランとバスタブの外に出している。
「さっきの写真の話」
目を閉じたまま、隆二さんはそう切り出した。
「良いの?本当に」
「良いのって?二人の写真撮らないことですか?」
「そう」
「隆二さんどうしてそんなに写真のこと気にするの?……あ!分かった!私が匂わすと思ってるんでしょー?」
「違うって。Aはそういうことしそうにないし」
「分かんないですよ?」
「いや、分かる。Aはそういうの嫌いなタイプ」
隆二さんは目を閉じたまま笑って見せる。
「……私ちょっと分かるんです。匂わせたくなる人の気持ち」
「え?」
隆二さんは目を開け、体を起こした。
「匂わせたくなる気持ち、ですよ?実際に匂わせたり、頼んでもないのに嗅がせにくる人は──」
ここから先の言葉を隆二さんに聞かせたくなくて、私は彼の耳を両手でふさぐ。
「そういう人は、アホやと思う」
聞こえてなくても私の唇の動きで何て言ったか分かったらしく、隆二さんは喉を鳴らして笑った。
「アホつったろ今」
両手を耳から離して笑う私を、隆二さんがそっと抱き締める。
「A、我慢してない?」
「してないよ?」
「本当に?」
「本当に……どうしたの、隆二さん」
隆二さんの唇が、私の肩に触れた。
「Aが俺の仕事理解してくれてるの、凄い助かる」
「うん……」
「でもたまに、良い子すぎて俺の胸がキューっとする」
“Aが、そういう風に言うから……”
「それ……さっき言いかけた言葉の続き?」
「うん」
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作者名:ぽち。 | 作成日時:2019年2月5日 20時