No.1510。10 (ページ31)

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踏み込めない領域。ページ31

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「って言うかさ、A全然焼けてないじゃん」

「ん？」

仕事始めのこの日、お土産を渡した私の顔を、純奈がじーっと見てくる。

「南国行ってたのに焼けてないじゃん。どうせ部屋に隠ってイチャイチャばっかりしてたんでしょ？」

「隠ってないよ！ちゃんと観光にも行ったし、ビーチでゴロゴロしてたし。日焼け止め塗りたくってね」

「ふーん。で？どうだったどうだった？バリ！」

「もうね……天国」

お土産のチョコをボリボリ食べながら、純奈は私の話を興奮気味に聞いてくれた。

「────次も海があるとこが良いねぇとか言ってね」

「えー、羨ましい……何かさ、右の人って彼女をお姫様にしてくれるんだね」

「お姫様？」

「そうじゃん！良いとこ泊まってクルーザー用意してくれてディナーは特別……普通、新婚旅行じゃないとそこまでしなくない？」

「新婚旅行……」

「一生に1回体験できるかできないかのことをホイッて簡単にしちゃって……お姫様扱い」

「そう……かも……」

「完璧だね。これで今後ジャマ子出てこなかったら完璧」

今度は、私が純奈をじーっと見る番。

「な、何で今ジャマ子の話？もう関係なくない？」

「は？右の人の気持ちに気付きながらも言い寄って、二人が付き合い出してからも言い寄って、別れたと聞けば言い寄って……ヨリ戻した今、彼女が言い寄らない理由ある？」

意識してないのに、私の眉間にシワが刻まれていく。

「で、でも、最近遭遇してないし」

「遭遇って！熊じゃあるまいし。それだってさ、Aがそういう飲み会に参加してないから遭遇してないだけじゃん」

「……ある」

「え？」

「今度あるの！飲み会！ジャマ子来ちゃうかな！？いや、来ても良いって言うか私に阻止する権限ないんだけど」

「あー、来るね！それは来る！」

「来るかなぁ？毎回ちょっと私にチクッとしてくるから怖いんだよね……」

それに、私が遭遇してないだけで隆二さんは遭遇してるかもしれない。

言い寄られたり、してるのかな……。