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隆二さんの体は、驚くほど簡単にプールの中にバシャンッ！と沈んだ。
「うわぁ！」
思ったより大きな水飛沫が上がって、周りの静けさと反比例するようにその音が辺りに響いた。
「何やってんだよー！」
ずぶ濡れの隆二さんは顔を手で拭い、少し眉を寄せたあと
「Aーー」
声を上げて笑い、私を追い掛けてきた。
「おぉぉおぉ！怖い！怖いから隆二さん！」
「つーかTシャツ重っ」
濡れたTシャツを脱いで、隆二さんはそれをプールサイドに放り投げた。
薄暗い中でもはっきり分かる、隆二さんの引き締まった体。
針一突きの隙もなく、まるで丹念に彫られた彫刻みたいなその体が私の方に１歩近付く。
「やられたわー、まじで」
「やってやったわー」
相変わらずつま先立ちで顎を上げて呼吸をしている私を「溺れちゃうね」と、彼の腕が抱き上げた。
私は落ちないように脚と腕を隆二さんの体に絡めて、彼の顔をじっと見つめる。
「隆二さん、ありがとう」
「ん？」
隆二さんは私を抱いたまま段差まで歩いていき、そこに腰を下ろした。
「旅行、凄く楽しかった！隆二さん色んな仕掛けしてくれて、何か本当……夢みたいだった」
「ほんと？良かった」
目を細める隆二さんの膝に乗ったまま、私は彼の髪を愛しさを込めてゆっくり撫でる。
「隆二さんは？楽しかった？私だけ楽しんでたりしてない？」
「楽しかったよ？決まってんじゃん」
「じゃあ……何が一番印象に残ってる？」
「……Aと24時間一緒に居て、ずっと楽しいと思えたこと」
「え？」
「俺1回くらい喧嘩すんじゃねぇかなぁと思ってたんだよ。でもぜーんぜん。ずっと楽しかった」
いつもの熱っぽい目で見つめられて、私の鼻がツンとする。
「私もずーっと楽しかったです。今も楽しい。あと、隆二さんが内緒で私のこと撮ってたのも楽しかった」
「バレてたぁ？」
目尻を下げた隆二さんに、私は少し首をかしげる。
「私なんか撮ってどうするの？」
「きれいだなぁと思って撮っただけ」
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作者名：ぽち。
| 作成日時：2019年2月5日 20時
