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「全然、楽しかった」
笑顔の隆二さんがテーブルに並べたパンフレットや書類たちを、私は舐め回すように見た。
「行き先はバリでーす!イェーイ!」
隆二さんが拍手をしたので、私もつられて手を叩く。
「で、ここ泊まる」
目の前に出されたパンフレットを見て、私は目を見開いた。
「フォーシーズンズだ!これ、ヴィラってやつですか!?」
「そうそう。ホテルと違って周りのこと気にならないし、ここで完結出来るって言うのかなぁ」
写真で見るそこは、レストランもスパもプールもビーチも敷地内にあって、ここから1歩も出なくても過ごせそうな雰囲気。
「観光でアクティヴに過ごしたいならそういう風に手配するし」
「ううん!こういう場所でゆっくりするの凄く良い!憧れちゃいます……」
「憧れじゃなくて行くんだって」
隆二さんが笑って、私は「そ、そっか」と何度も頷いた。
「海が見える部屋にした。ベッドに寝ながら海が見えて、何だっけ?プライベートプール?がついてる」
「プール!?部屋に!?」
「そー。あとは泊まってからのお楽しみー。これ、パスポートの番号とか書くやつね、あとこれが保険の。月末までに書いといて」
「あの、私の分の旅行代は?いつ渡せば良い?」
「は?何それ」
書類を封筒にしまいながら、隆二さんが首を捻った。
「私の分の旅行代ですよ」
「良いよ。そんなの」
「だめ!そんなのって金額じゃないもん。ジュース奢るのとは訳が違います」
「良いって。誘ったの俺だし」
「隆二さん、私だって仕事してお給料もらってるんですよ?」
「知ってるー。売るほど靴持ってるもん」
「そうじゃなくて、」
「俺がしたいの。二人で出しあって行く旅行も楽しいのは分かってるけど、俺が全部したいの。自己満。付き合って」
「じゃ、じゃあ!何かお返し出来ますか私に」
「お返し?普段してもらってるから良いよ」
「うーん……」
突然、隆二さんの両手が、私の頬をムギュッと挟んだ。
「“うーん”じゃなくて“うん”って言ってよ。そっちのが俺嬉しいけど」
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作者名:ぽち。 | 作成日時:2019年1月14日 17時