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食事を下げてもらったあと、私たちはもう一度バスタブに体を沈め、アイスを食べながらバスローブのままDVDを観た。
タイトルは“理想の彼氏”
私は敢えてこのタイトルの作品を選んだのだけど、隆二さんは特に反応を示さなかった。
でも、そんなとこも好き。
真っ暗な部屋で、隆二さんにもたれながら観る映画。
偶然の出会いから恋に落ちた二人が、遠回りをしながらも結ばれて……そして、別れを選ぶ。
隆二さんは真剣に映画を観てて、器の中のアイスは半分溶けている。
「これ……悲しいやつ?」
「最後、すごくキュンとしますよ」
「へぇ……」
シェイク状になったアイスをすくった隆二さんのスプーンから、たらっとアイスが垂れて
私の手に落ちる。
「あ、ごめん」
隆二さんはテレビを観たまま私の手を握り、
落ちたアイスをペロっと舐めた。
「えっ……」
ドキッとして私のアイスも急速に溶けていきそうだった。
「おぉー……最後ヤバイじゃんこれ!」
「でしょ?キュンとした?」
「したー。台詞じゃなくて絵面で見せるのが良いよねー」
「そーなんですよ!」
「あと今日は二人で最後まで観られた」
「やり直し成功ですね」
二人でニッと笑ったあと、隆二さんはそっと私を押し倒した。
キスする距離で、私は意地悪く隆二さんに訊ねる。
「隆二さん、こんなことしたっけ?あの日」
「してない。でも、したかった」
“したかった”って言葉で瞼がジワッと熱くなるなんて、私変なのかな。
でも、私を包み込む腕も、髪を撫でる指先も
熱い瞳も、微かに震えてるその手も
あの日と同じで、やっぱりちょっと泣きそうになった。
「隆二さん、今日はありがとう……凄く楽しかった」
「……まだ終わってないけど?楽しいこと」
「あ、そうだ」
笑った唇でキスをして、私は彼に体を預けた。
────素肌の私の体が身に付けてるのは、隆二さんから貰った指輪と彼の体温だけ。
これが幸せじゃなかったら、幸せなんて世界中探しても見つからない。
そう思える1日だった。
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11月1日
理想の彼氏。
──最高の記念日。
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作者名:ぽち。 | 作成日時:2019年1月14日 17時