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「そう。どこ行くかまだ決めてなかったし」
「……あれ?でも隆二さんバリ行ってたよね?」
「うん、去年の正月休み」
「じゃあダメ!違うとこにしよ」
「なんで、良いじゃん」
「せっかく行くなら違う国の方が良いじゃないですか」
「同じ国でもAと行くのは初めてじゃん。でも……A、バリ大丈夫?リゾートでもハワイとかグアムとは全然違うよ」
「それ、食事とか衛生面とか?」
「そー。こんな大きさのヤモリも出るよ。こーんなの」
隆二さんはおおよそヤモリの大きさとは思えないサイズを指で表して、私は肩をすくめる。
「こういうの部屋に出たらどうすんの?Aの背中テケテケテケーって」
背中を隆二さんの指がかけ上ってきて、私は思わず叫んだ。
「どーしましょうか……でもインド洋には触れたいな……」
「まぁ……ちょっと考えるかぁ。違う国も調べながら」
「うんうん」
お風呂を出て、私たちはルームサービスを頼んだ。
あの日食べたかったお肉と、
「これが……」
「シブースト?」
林檎のシブースト。
「ムースでもないし……」
「プリンでもないし……」
「「でも美味しいね」」
二人でシブーストをつつきながら、私はテーブルの端を見た。
「ねぇ隆二さん。テーブルに薔薇が飾ってある」
「前も飾ってあったよ?」
「……嘘だー……」
「本当だよ。お前なにを見てたんだよ」
可笑しそうに肩を揺らす隆二さんを見ながら、私はパッと口を開いた。
「多分、隆二さんを見てた」
「え?」
林檎をすくっていた隆二さんのフォークが止まる。
「私は、あのときもう隆二さんのこと好きだったから隆二さんのこと見てたんだと思います」
あのとき、伝えてれば良かったなって思ってた。
「私を助けに来てくれたスーパーマンみたいだなって思ってました」
隆二さんは目を伏せて微笑み、すくい直した林檎を私の唇に近付けた。
「照れるじゃん」
「そういう顔も見ちゃう」
私は林檎を口に入れ、口角を上げ微笑んだ。
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作者名:ぽち。 | 作成日時:2019年1月14日 17時