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「あの日のことがきっかけで写真撮られて俺たち1回会わなくなったでしょ」

「うん……」

「でも、部屋で過ごしてた時間は楽しかったわけで……俺はだけどね？」

「私もだけどね？」

柔らかく笑った隆二さんはバスタブの縁に腰を下ろした。

「悪い思い出のままは嫌だなぁと思って。だから、やり直し？みたいな」

私はあのとき、ずっと思ってた。

隆二さんを呼び出さなきゃ良かった
部屋に呼び止めなきゃ良かった
一晩過ごさなければ良かった

ずっと思ってた。

でも、あの日はそれだけじゃない。

沈没寸前だった私を、隆二さんが救ってくれた日───

「記念日だから本当はスイート泊まるんだろうけど、部屋も同じにしたくて……そこだけごめんね」

私も隆二さんの隣に腰を下ろし、彼に少し肩をぶつけた。

「どうして謝るんですか。スイートよりこっちのが良い！あの日のやり直し、私もしたい」

「本当？じゃあ……何からする？」

「やっぱり順番通りお風呂から！」

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「Aー」

「はーい」

「あの日は二人で入ってなくね？」

バスタブの中で私の体を後ろから抱き締めながら、隆二さんが首をかしげた。

「入ってからそれ言いますぅ？じゃあ隆二さんお風呂から出たら良いじゃん」

「うそ。うそうそ。やり直しだから一緒に入って良い」

私が笑うとお風呂の中の泡がふわりと揺れた。

「隆二さん、あそこにテレビって前からあった？」

バスルームの鏡の上のテレビを指差すと、隆二さんは「あったよ？」と不思議そうな顔をした。

「ありました？全然記憶にないなぁ……」

「ゲスな男に誘われたあとでいっぱいいっぱいだったからじゃん？」

────ゲス。

でも確かにそうだと頷いて、私は隆二さんの体にもたれたままテレビに視線を移した。

流れているのは旅番組。

「あー！！隆二さん観て観て！海すっごい綺麗！バリ島だって！」

「……んじゃバリ行く？」

「え！？お正月？」

私が勢いよく振り向いたせいで、隆二さんの頬に泡が飛んだ。