No.1510。9 (ページ42)

今日:14 hit、昨日:34 hit、合計:406,578 hit

To do it again. ページ42

・

.

.

.

.

.

広々としたロビー、そこを行き交う人々。

日本語だけじゃない言葉が耳に入ってくるフロントで、私はチェックインをする隆二さんの背中を見つめていた。

ここは、１年前の3月16日に隆二さんと泊まったホテル。

センセイからの“お誘い”を受けた場所。

禁断の一夜を過ごした場所────

「オッケー。行こ」

チェックインを済ませた隆二さんの手には、あの日と同じカードキーが2枚。

「エレベーター……あっちか」

忘れもしない階数“50”を押した隆二さんは、首をコキッと鳴らすような仕草をして「ん？」と私を見た。

一周年のこの日に、このホテルを選んだ理由が聞きたいんだけど、

それは部屋に入ってからゆっくり聞きたい気もする。

「私、着替えとか持ってきてないけど……どうしよ」

私の質問に、隆二さんは手に持っているゴヤールのトートを揺らして見せた。

「こん中に入ってる」

「え？私の着替え？」

「うん。俺の部屋に一式まとめて置いてたじゃん？それ持ってきた」

「……準備、完璧ですね」

「当たり前じゃん」

ニッと笑った隆二さんと共にエレベーターを降りて向かった部屋。

ドアを開けて、私は「あっ」と声をあげた。

タイムスリップした？って思うくらい、あの日と同じ景色が広がる室内。

違うのは、カーテンとブラインドが上がっていることくらい。

部屋の入り口で突っ立っている私の肩を、隆二さんが後ろから「入って入って」と押した。

「ここ、あの日と同じ部屋？」

「んーと、全く同じじゃないけど部屋のタイプは同じ」

「ですよね……」

不思議な気持ちで立ち尽くしている私を通りすぎ、隆二さんはバスルームのドアを勢いよく開けて中に入った。

私も何となくそのあとを着いていく。

バスタブにお湯を溜めている隆二さんを見て、これもあの日と同じだと気付いた。

「何かさ、引っ掛かりがあって」

「え？」

「あの日のこと」

白い湯気が立ち上るバスルームで、私は隆二さんの話に耳を傾けた。