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「ここ停めるかー……」
隆二さんは銀座にあるデパートの駐車場に車を停めた。
「ここ?ここでお買い物?」
「いや……」
首を横に振った隆二さんは、デパートの中には入らず外に出た。
左はヴィトン、右はブルガリ、目の前にはシャネル。
「シャネルでお買い物?」
「いや」
また首を横に振った隆二さんは、私の手を握りシャネルのビルのある方の通りへと歩いていく。
「やっぱシャネルじゃん」
「違うって」
本当に、どこに行くんだろ。
この通りって、他に何があったっけ?
「……あ、分かった!吉野家!?吉野家行く!?」
「はぁ!?吉野家は買うんじゃねぇだろ!食うんだろ!つーかまじで記念日の食事が吉野家だったらどうすんの?」
「良い。特盛食べちゃう。ちょっと高いよ?」
「………どうしようかな、この子」
別の意味で首を横に振った隆二さんは、吉野家を通りすぎ
足を止めた。
「ここで買い物しよっかなーと思って」
そのお店を見て、
「あ……」
私は自分のネックレスに思わず触っていた。
目の前にあるのは、
────Van Cleef & Arpels
「好きなんでしょ?職人仕事!って感じがして」
微笑む隆二さんに、私は目を見開く。
「好きなんでしょ?って……え?私に?私のお買い物?」
「あのさ、記念日にさ、自分の物買いに来る男いる?ほら、入るよ」
「ちょ、ちょ、ちょ、何買うんですか!?」
「指輪」
「指輪!?」
「そのさっぱりした薬指見る度にムズムズしてたんだよー」
「そ、そんな高価な物ダメですよ!だいたい隆二さん薬指の指輪に意味ないと思ってるって言ったじゃないですか!」
「俺はな。お前は別」
「え……」
ふわっと甘い匂いをさせ、隆二さんが私の腰に手を回した。
「入ろ」
入り口のドアマンが、その真っ白の手袋でドアを開け
私たちを中へと招き入れた────。
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作者名:ぽち。 | 作成日時:2019年1月14日 17時