Anniversary. ページ33
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「────だからね、健太郎くんに待ってって言ったのは全然悪くないの。ただ、好きな気持ちは変わらないってことは伝えなきゃいけないの」
昼休み、熱弁を奮う私の顔を、純奈はポカーンと口を開けて見ている。
「こんなね、闇子に言われたかないだろうけど!私みたいにこじらせて1回お別れして後悔して欲しくないわけ」
「え……いや……え……え?」
「この間雨の渋谷で思った!大事なのは今だなって。だから純奈には今の気持ちを今健太郎くんに伝えてほしいの!」
「………」
「分かった!?」
「わ、分かった……何?どした?何か今日熱いじゃん」
「いっつも冷めてるみたいな言い方しないでよ……」
「ちょっとクールじゃん。じゃなきゃアイアンマンなんて呼ばれない!」
「アイアンは熱されると熱いんだよ……すごく」
「あぁ……なるほど」
「取り合えず健太郎くんに伝えてね。絶対ね」
「はい。分かりました」
口角を上げて頷いた純奈に安堵し、私は午後からの仕事を全力で仕上げた。
仕事着の上に羽織るジャケットが、日に日に厚手になっていく今日この頃。
秋の夕暮れは早くて、空の端っこはもう、冬の匂い。
家に帰り着いてコーヒーを落としていると、玄関からガチャガチャっと鍵を開ける音が聞こえた。
「ん?」
うちの家の鍵を持っているのは私以外に隆二さんしか居ない。
「おぉ!帰ってた!?」
キャップも取らずに家に入ってきた隆二さんは迷わず寝室に入り、あっという間に出てきた。
「パーカー忘れてた」
へへっと笑った隆二さんの手には、黒いパーカー。
「あ、忘れ物取りに来たんだ!?そっか」
「そうそう。コーヒー良い匂いしてるしゆっくりしたいんだけど俺遅刻してんだよ」
「えぇ!?じゃあ早く行かなきゃ!」
「うん」
タッタッタと玄関に走っていく隆二さんのあとを追い掛け、靴を履く彼の足元に視線をおろす。
「それ、可愛いネックレスしてんね」
「え?」と顔を上げ、私は自分のネックレスに触れた。
「これ?うん、気に入ってます。ここのアクセサリーは職人仕事!って感じがして好きで」
「へぇー……」
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作者名:ぽち。 | 作成日時:2019年1月14日 17時